『数字は苦手』と言わず、変動損益計算書を活用しよう
売上や利益のアップを目指して、多くの中小企業が様々な対策に取り組んでいると思います。その際、どの商品をいくら売ればいいか、利益率の高い商品はどれか、といった経営判断に必要な情報をわかりやすく把握できる「変動損益計算書」をお勧めします。
【 通常の損益計算書と変動損益計算書はどう違う? 】
「決算書はわかりにくい・・・」という印象をお持ちではないでしょうか。その理由の一つに、自社の商品や製品がいくらの利益を上げているのか、あるいは現状のどこをどのように改善すればよいのか、といったことが読み取りにくいからではないでしょうか。そこで、通常の損益計算書よりも、変動損益計算書を活用することをお勧めします。変動損益計算書とは、すべての費用を、それが売上に伴って増減するかどうかで「変動費」と「固定費」に分けて表示する損益計算書です。通常の損益計算書では、売上高から原価を差し引いて売上総利益を出し、さらに経費を差し引いて経常利益を算出します。これに対して、変装損益計算書は、売上高から変動費を差し引いて限界利益(粗利益)を出し、そこから固定費を差し引いて経常利益を算出します。そのため、例えば「売上が20%減ると、利益はいくら減るのか」「目標利益を達成するためには、売上をいくらあげなければならないのか」といった課題への答えを導き出すことができます。
◆ 変動費・・・ 売上高の増減に応じて変動する費用 → 商品の仕入原価、材料費、外注費などの製造原価にかかわる変動費のほか、荷造包装費、配達費など販売にかかわる変動費がある。
◆ 固定費・・・売上高の増減にかかわらず固定的に発生する費用 → 役員報酬、管理職の人件費、減価償却費、賃貸料、保険料などがある。
◆ 限界利益・・・いわゆる粗利。売上高から変動費を差し引いた利益 → 生産や販売が増加しても固定費は増加しないため、限界利益の増加分がそのまま経常利益の増加分になる。
◆ 限界利益率・・・売上高に対する限界利益の割合
◆ 変動費比率・・・売上高に対する変動費の割合
【 変動損益計算書で何がわかるのか 】
(1)売上高に比例した粗利益(限界利益)がつかめる。
変動費は、売上高の増減に応じて変動しますので、売値や仕入値が変わらなければ、限界利益率は一定になります。つまり、限界利益は売上高に比例するわけです。仮に、売上高が10%増えると、変動費、限界利益も10%増えることになりますので、売上高の増減によって限界利益がどれだけ増減するかをつかむことができます。これに対して、通常の損益計算書では、製造業の場合、製造原価に人件費などの固定費が含まれているため、売上総利益が売上高に比例しません。
(2)「単価×数量」に分解できる
変動損益計算書では、売上高をさらに「単価×数量」の式に分解することができるので、「いくら売らなければならないのか」という金額ベースだけでなく、「いくつ売らなければならないのか」という数量ベースでの検討もできるようになります。仮にA社の売上100万円が、すべて単価1万円の製品だとすると、年間の販売数量は100個(100万円÷@1万円)で、製品1個当たりの変動費は4千円(40万円÷@100個)になります。つまり、A社は製品を1個売るごとに6千円(1万円-4千円)の限界利益が出ることになります。A社の場合、販売個数を100個から110個に増やすことができれば、経常利益は6万円増の18万円になり、販売個数が20%減少して80個になってしまうと、経常利益は0円になることがわかります。この経常利益が0円になる点(限界利益=固定費)を損益分岐点といい、このときの売上高を損益分岐点売上高といいます。つまり損益トントンとなる点(売上高)です。
【 勘や経験則とは異なる実態を発見することもある 】
変動損益計算書は、売上と粗利益の増減だけでなく、例えば、限界利益率を商品別や店舗別などでつかむこともできます。その結果、これまで見えていなかった経営上の課題が見えてきます。例えば、一番業績を上げていると考えていた商品や部門が、思ったほど利益を上げていなかったことがわかるなど、これまでの社長の勘や経験則での判断と異なる実態を発見することもあります。
《 今月のワンポイント実務 》
2月16日~3月15日は所得税の確定申告の時期です。
確定申告にあたっては、様々な提出資料や各種控除がありますので間違いのないよう余裕を持って準備しましょう。例えば、自分が寡婦(寡夫)に該当するときに受けられる寡婦(寡夫)控除は、本人の合計所得金額や、夫(妻)との死別・離婚後の状況によっては適用対象にならない場合がありますので、注意して下さい。