会社の資産・負債を実態で見てみる Vol.1
日本航空(JAL) の経営破綻のニュースは記憶に新しいと思います。一連の報道の中で、同社の実態バランスシート(貸借対照表)では、7,000億円を超える実質債務超過にあったという表現に聞き覚えはないでしょうか。この実態バランスシートとは、文字通り会社の実態に最も近い決算資料といえます。
【 いま会社の資産等を売却したらいくらになるのか 】
会社の決算書は、会計基準や税法に則って正しく作成されていますが、資産や負債は原則として、取得原価(購入時の取得価格)で表わされています。したがって、正しい会計処理、税務処理に基づく決算書であっても、実態を反映しきれていない部分があります。銀行借入や経営改善を進めるためには、自社の資産・負債の実態を見てみることも必要です。例えば、JALの例では、同社が保有する航空機を実態(中古機の市場価格)で査定したところ、決算書上の金額の半分になったといいます。その他、様々な資産・負債を時価等で評価し直したところ、実質は約7,000億円の債務超過状態だったということです。実態バランスシートとは、仮に、いま会社が保有している資産を売却したら、いったいいくらになるのか、あるいはリース債務のように帳簿に載っていない債務を含めて、自社を評価し直したものです。金融機関は、融資先の決算書を時価等で評価し直しています。したがって、金融機関に提出する経営改善計画を作成するには、実態バランスシートで現状を表すことが望ましいといえます。また、経営分析をする際にも、実態を表した数値に基づいた分析のほうがより望ましいでしょう。主要な項目で具体的に見ていきます。
(1) 売掛債権 -不良債権はないか?
売掛金や受取手形、建設業であれば完成工事未収金について、回収の見込みがない債権は、相手先別に信用力の程度を評価し、回収可能性に応じて減額する額がないかどうかをチェックします。例えば、得意先がすでに倒産し、回収不能になっているにもかかわらず、税務上、売掛債権のまま計上されているものについては、実態上は、ないものとします。それ以外にも、次のような事実がある債権は回収可能性が低い、あるいは可能性がない債権として減額、またはゼロとして評価します。
・ 回収が遅延している債権。 ・ 得意先から減額を要請されている債権。 ・ 休業・店舗を閉鎖した得意先の債権。 ・ 経営者が行方不明となっている債権。
(2) たな卸資産 -売れなくなった商品はないか?
実地たな卸を行って、帳簿上の在庫と一致しているか、店ざらし品や陳腐化した商品などがないかを確認します。そのうえで、売れないと思われる不良在庫を除きます。
・ 自社製品、商品であっても、仮に換金処分するとした場合、通常の売価で換金することは難しいと思われるので、減額する。 ・ 仕掛品は換金可能性はゼロと考える。 ・ 原材料などは、仕入先等に引き取ってもらえるのであれば、その引取価格で評価する。
次週は、土地、機械等、貸付金などをご説明します。