電卓と決算表

会社の資産・負債を実態で見てみる Vol.2

3) 土地・建物 -多額の含み額はないか?

土地・建物については、時価等で評価します。経営再建計画における評価では、今後も継続して使用する物件は時価で評価、売却予定のものは、早期に売却することを前提とした価格等で評価します。

(4) 機械装置・車両 -自社専用の機械は処分が難しい

機械装置や車両は、売却することはできますが、自社でしか使えないような特殊な機械などは、ほとんど処分不可能といえますので、評価はゼロに近いといえます。

(5) 有価証券 -ゴルフ会員権の価値は?

上場株式やゴルフ会員権については、含み益、含み損があれば、調整します。中小企業では、決算書には購入したときの金額で計上されていることが多いので、現在の市場価格に直します。

(6) 貸付金・仮払金・立替金 -経営者に対するものはないか?

回収見込みがないものは除きます。特に経営者に対するものは除いて下さい・

・ 役員宛の貸付金は、回収可能性が不明確であればゼロ評価にする。 ・ 福利厚生を目的とした従業員向けの住宅取得資金等の貸付については減額しない。 ・ 仮払金のうち、本来費用処理すべきものについては減額する。

(7) リース債務 -隠れ債務に注意!

負債については、まず評価損益は発生しませんが、例外的なものにリース債務があります。機械や車両、OA機器をリースしている中小企業では、リース料を賃貸借処理して、リースしている物件を資産計上していないケースが多くあります。この場合、リース債務(リース資産の未払いのリース料残高)という帳簿上にない債務(簿外債務)が存在することになります。もし、会社にリース資産を引き揚げられるだけでなく、残ったリース債務も支払わなければなりません。そのために、リース債務は隠れた負債といえるのです。

決算書の数字を実態に近づけてみると、思っている以上に、資産が少なかったり、負債が多いなどの現状に気付かれると思います。このように実態で見直してみることは、自社の実態を知り経営分析や経営改善計画を作成するうえで、重要な資料になるのです。

◆ 会社の資産・負債の実態を把握する!

実態で見てみることの意義は、経営が苦しい状況にあるとき、もし仮に会社の全財産を処分したとすれば、どれだけの資金が確保できるのか、借入金返済原資になるのかを正しく把握するためです。いま、資金不安や業績不安がない企業はとりあえず考えなくてもいいでしょう。会社を実態で表わすことは、中小企業金融円滑化法にいう「実現可能性の高い経営改善計画(実技計画)」の策定にも大いに関係します。中小企業が、経営改善計画を策定する場合に、計画の初年度の前年末の決算において、業績を悪化させる要因を決算書から落としておくことが必要になります。これは計画開始後に、赤字要因が表面化して、計画の実現可能性に悪影響を及ぼさないためです。特に、上記でも説明したような以下の点については、注意して下さい。

・ 長期に滞留している売掛債権で回収可能性のないものは減額等をする。 ・ 売却できない滞留在庫、不良在庫を整理する。 ・ 陳腐化した設備は償却する、稼働中の設備等も正しく減価償却する。

要するに、まず資産項目を見直し、損失があれば損益計算書に費用計上し、スリムな決算書を作成します。そのうえで、その企業の強みとなる定性要因(例えば、営業力、技術力、経営者の財産状況、資質など)を加味して、計画の実現可能性を高めることになります。したがって、自社の資産・負債の現状を正確に把握することは重要なのです。