電卓と決算表

改正労働基準法への中小企業の対応

平成22年4月1日、長時間労働の是正を中心とした改正労働基準法が施行されます。改正によって、中小企業が強制的に適用されることはありませんが、今後は、残業時間等の高比率の割増賃金の支給や有給休暇の取得等についての規制強化が予想されます。

改正労働基準法のポイントは、時間外労働の割増賃金と年次有給休暇の有効活用にあります。そのうち、中小企業に関係する改正点は、次の2つです。

《 中小企業に関係する改正点 》

(1) 一定の時間を超える残業に対しては、割増賃金率が25%を超えるように努めること。

(2) 年次有給休暇を日数ではなく時間単位で取得できるようになる。

今回の労働基準法改正のねらいは、会社に経済的な負担を加重することで、特に問題となっている長い残業時間(時間外労働)を抑制させることにあります。特に割増賃金の問題は、厳しい経済環境のなかで、人件費負担が増えることになりかねず、経営者には頭の痛いところですが、まずは、自社の残業時間への対応がどのようになっているかを確認して下さい。

【 法定労働時間を超える場合の対応をしていますか? 】

(1) 36協定を結んでいますか?

労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週40時間と決められています。しかし、現実問題として、残業や休日労働がなければ会社経営が立ち行かないということがあります。そのため、会社が従業員と協定(36協定)を結ぶことで、法令で定める一定の時間内(1か月45時間、2か月81時間など)であれば、1週40時間という法定労働時間を超えることが認められています。まずは、この36協定をきちんと締結し、労働基準監督署に届け出ていなければなりません。

※ 36協定とは・・・ 経営者が従業員に法定時間外労働や休日労働をしてもらうためには、「一定の期間について延長できる時間、または労働させることができる休日」について、従業員の過半数の代表者等の同意を得て、「時間外労働及び休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長にとどけなければなりません。この協定は労働基準法第36条に基づくことから「36協定」と呼ばれています。

(2) 繁忙期や急な受注に対応するには?

しかし1年を通じて、繁忙期や急な受注等への対応のために、あらかじめ決めた残業の限度時間を超えて残業が必要な場合があります。例えば、限度時間を1カ月45時間としていても、繁忙期など45時間を超えて50時間、55時間といったことが見込まれるようなときです。このような場合には、「一定期間として協定されている期間ごとに、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる」旨を36協定に追加した「特別条項付36協定」を従業員代表と結ぶことで、限度時間を超える労働(年6回まで)が可能になります。改正点の(1)でいう割増賃金率25%超の努力義務とは、このように36協定で決めた限度時間を超えて残業させるときには、割増賃金率が25%を超えるように求めているのです。労働基準法改正に伴って、従業員との間で「特別条項付36協定」を結ぶ際には、次の3点を盛り込む必要があります。

1. 限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)ごとに割増賃金率を定めること

2. 上記1の率を法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めること

3. そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること。

《 特別条項の具体例 》・・・ 一定期間についての延長時間は1カ月45時間、1年360時間とする。ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期が切迫したときは、労使の協議を経て1カ月60時間、1年450時間までこれを延長することができる。この場合、延長時間をさらに延長する回数は6回までとする。なお、延長時間を1カ月45時間を超えた場合、1年360時間を超えた場合の割増賃金率は30%とする。

【 時間単位で有給休暇を取得できる 】

改正点のもう一つは、年次有給休暇の取得について、日数単位ではなく、時間単位で取得できる制度が創設されたことです。これは、例えば、1日を8時間に分割して、1時間単位で取得できるようにすることで、未消化の多い有給休暇を少しでも使わせようというものです。

【 労働基準法の今後の動向 】

中小企業に適用される、一定の時間を超える残業時の割増賃金についての改正は、努力義務ではありますが、将来的には、より強制力が強まる可能性があります。すでに大企業では、今改正から、労働時間が1カ月60時間を超えた場合には、超えた時間の割増賃金率を50%以上にするか、あるいは、引き上げた割増賃金分に代えて、有給休暇を与えなければならないとされています(代替休暇)。中小企業は、当分の間、そこまでの適用は猶予されていますが、長期的にはその方向性で規制がされる可能性がありますので、ここで述べた36協定などを整備して早目に届け出ておきましょう。

flair 今月のワンポイント実務

時間単位の年次有給休暇を導入するには協定等が必要です!

時間単位の年次有給休暇を導入するには、従業員の過半数を代表する者との協定が必要となります。これに伴い、就業規則の年次有給休暇の条項について改定を行う必要も生じます。