電卓と決算表

損益分岐点売上高の見方と活かし方!

最近の新聞に「不況が長期化かつ深刻化したため、固定費の見直しなど、経営のリストラによって、損益分岐点売上高の引下げを図る企業が続出している」という記事が掲載されていました。この「損益分岐点売上高」とは、何なのでしょう。

【 利益がゼロになる売上高が損益分岐点売上高 】

「損益分岐点売上高」とは、損益がトントン、つまり経常利益がゼロになる売上高のことをいいます。実際の売上高が、損益分岐点売上高を超えていれば、黒字で利益が出ていることになり、下回っていれば、赤字で損失が出ていることになります。また、実際の売上高があと何%減少したら経常利益がゼロになるのかを知るための指標に「経営安全率」があります。この数値が高いほど不況に耐える力が強いと判断されます。TKCの月例経営分析表(変動損益計算書)、「三期比較経営分析表」には「損益分岐点売上高」「経営安全率」が表示されています。

【 固定費増加率と限界利益率をチェックする 】

月例経営分析表などを見て、実際の売上高と損益分岐点売上高をチェックして見て下さい。実際の売上高が損益分岐点売上高を下回っていたり(経営安全率の数値がマイナス)、あるいはその差が小さい時には、次のような改善ポイントが考えられます。

(1) 限界利益率を高める(変動費率を下げる)・・・・・ 月例経営分析表の「限界利益率」をチェックしてみて下さい。限界利益率が下がった、あるいは変動費率が上がっていれば、その原因を調べて改善可能かどうかを検討します。原因には、次のような事が考えられます。

・ 販売数を増やすために、値引きが増えている。 ・ 低価格競争に陥っている。 ・ 外注量が増えている。 ・ 不良品やロスが増えている。 ・ 原材料の値上りや使用量の増加がある。

(2) 固定費を減ら・・・・・ 「固定費増加率」をチェックしてみてください。固定費が増加していれば、その原因を調べて、改善を検討します。固定費のうち、人件費を抑えるには、パート・アルバイトの活用や内製から外注への移行などが考えられます。人員配置の見直しや、公的助成金の活用なども検討しましょう。

・ 減産によって不要となったり、休止している設備等の維持・管理費がかかっている。 ・ 作業効率の悪さから人件費等が増えている。 ・ 交際費、交通費、広告費などが必要以上に増えている。 ・ 前年や予算と比べて増加している経費がある。

総費用に占める固定費や変動費の割合は、業種・業態によっても異なります。固定費が大きくて変動費が小さい、反対に変動費が大きくて固定費が小さい業種もあります。同じ製造業でも、自社で製造設備を多く持つ自社生産型では、固定費の割合が高いため、自社設備や人件費など固定費の削減努力が重要になります。一方、外注(アオウトソーシング)の割合が大きい外注生産型では、固定費の割合は小さいが、変動費率が高いため、外注先の見直しなど、変動費率を低下させる努力(限界利益率の改善)が必要です。

(3) 売上を増・・・・・ 厳しい状況にあって売上を伸ばすのは並大抵のことではありません。しかし、損益分岐点売上高を超えるだけの売上を確保しないと、企業は継続していきません。自社の損益分岐点売上高を把握し、目標とする利益を出すには、最低限いくらの売上が必要かを明確にした上で、それを達成するには、「いつ、どこで、何を、いくら売るか、その方法は・・・・・」などの具体的な行動計画を立て、実行していきましょう。