その支払いは、給与か?外注費か?~Vol.2~
【 請負関係の留意すべきポイント 】
下請業者の仕事の内容は様々なので、実際には判断が難しいところですが、実態が請負であることを明示できるように、最低限、次のことを確実に実行して下さい。
・ 請負契約書(業務委託契約書)を作成し、契約書には、業務内容を明らかにしておく。 ・ 外注費が自ら請負金額を計算し、請求書を発行してもらう。 ・ 請求書にもとづいて支払いを行い、領収書を受け取る(収入印紙を忘れない)。
《 事例1 》 歯科医院から歯科技工士への支払いが、給与と疑われた。
A歯科医院では、B歯科技工士に義歯・歯冠の制作を依頼し、その代金を外注費として処理していたところ、税務調査において、A歯科医院からBに、義歯等の材料の提供があったことから、その支払いが給与にあたるのではないかとの指摘を受けました。しかし、以下の事実から、給与と認定されませんでした。
・ A歯科医院とBとの間で、業務内容について請負契約書を作成していた。 ・ Bが他の歯科医院からも業務を請け負っていた。 ・ 材料は、Bが仕入れるよりもA歯科医院が調達したほうが安価であるという合理的な理由があり、BもA歯科医院に対して材料費を支払っていた。
《 事例2 》 電気工事業者が職人に支払った外注費が給与と判断された。
電気工事業X社は、電気配線工事を職人Yに依頼し、その支払いを外注費として処理していましたが、税務調査において、以下の事実から、実態は雇用関係にあるとして、給与と判断されてしまいました。
・ YはX社以外から仕事を請け負っていなかった。 ・ 外注費の金額が、1日当たりの基本給にYが業務に従事した日数を乗じて算定されていた。 ・ 作業に使用する道具や材料をすべてX社が用意していた。 ・ 電気配線工事の時間が、午前8時から午後5時までと決まっていた。
【 雇用から請負への変更は慎重に! 】
従業員を雇用から請負形態に変更して、人経費を減らしたいと考えても、従業員として業務に従事していた場合と実態が変わらなければ、税務上は認められません。また、労働法規上も、従業員の同意なしに、一方的に請負形態に変更することは許されません。「同意しなければ解雇する」という手段も当然認められません。自社の財務内容などを説明し、話し合いで同意を得ていかなければなりません。仮に従業員の同意を得られて、請負契約に変更したとしても、働く側には、雇用環境の悪化といえます。そのため、これまでのような人間関係の良さや会社の帰属意識から生まれる仕事への責任感やモラルに期待できなるなる恐れもあります。慎重に検討したうえで判断しなければなりません。