特例事業承継税制 ~ 活用のための注意点 ~
前回は新たに創設された特例事業承継税制のご紹介と、手続きの流れについてをご紹介させて頂きました。今回は特例事業承継税制を利用する為に必要な条件についてご紹介していきたいと思います。
条件には大きく、以下の4つがあります。
1、人の条件
2、会社の条件
3、最初の贈与から5年間の条件
4、免除になるための条件
1、人の条件
先代経営者
・会社の代表者であること
・会社の過半数以上の議決権を有し、筆頭株主であること
贈与時の追加要件
・贈与時までに代表者を退任すること(有給役員で残ることは可能)
・贈与時に保有する自社株式を一定数以上一括して贈与すること
後継者
・贈与の日において満20歳以上であること(贈与の場合)
・贈与の時に、会社の代表権を有していること(相続の場合は、5ヶ月を経過するまでに代表者であること)
・贈与、相続後に、受贈者本人と親族を合わせて議決権の総数が過半数を超えること
・(後継者が1人の場合)贈与時に筆頭株主であること
・(後継者が2人及び3人の場合)贈与時において受贈者本人の有する議決権の数が、10%以上であること及び筆頭株主であること
・受贈者本人は、贈与の日までに3年以上役員であること(贈与の場合)
・贈与、相続後申告期限まで株式を保有し続けていること
・他の事業承継税制の適用を受けていないこと
以上が人の条件となっております。特例事業承継税制では、後継者は3人までを指定できるようになっています。また、後継者は親族でなくても問題ない事も覚えておく必要があります。
2、会社の条件
・会社が中小企業者に該当することです。中小企業者とは次の条件を満たす会社をいいます。
・円滑化法の認定をうけていること(都道府県知事の認定を受けている事)
・常時従業員が1名以上いること(外国会社なら5名以上)
・資産保有会社及び資産運用会社でないこと。※ただし、一定の要件を満たすと特例の適用を受ける事が出来る
資産保有型会社とは・・・有価証券や自ら使用していない不動産、ゴルフ会員権、現預金といった特定資産の合計金額が総資産額の70%以上である会社
資産運用型会社とは・・・特定資産の運用収入の合計額が総収入金額の75%以上である会社
・非上場株式会社であること
・風俗営業会社ではないこと
・総収入額が0でないこと(事実上の休業状態の場合事業承継税制は適用できません)
以上が会社の条件となっております。中小企業者には、資本金か、従業員数の一方の条件さえ満たせば該当します。
又、円滑化法についてはこちらのサイトに詳細が載っています。
3、最初の贈与、相続から5年間の条件
贈与税、相続税の納税猶予制度が適用されると、以下のような要件が課せられることになります。この要件が適用される期間は最初の贈与、相続に係る申告書の提出期限から5年間となっています。
・贈与、相続を受けた本人は代表者であること
・従業員の雇用を平均して8割以上を維持すること。※ただし、雇用の8割維持の条件を満たせなくても、経営状況の悪化や正当な理由があり報告を行う事で回避することが出来ます。
・贈与、相続の株を譲渡をしないこと
・会社の年間収入がゼロにならないこと
以上が最初の贈与・相続から5年間の条件となっております。長期間守る必要がありますので、目につく場所に備忘録等を残しておきたいです。
又、会社の年間収入は覚えているだけでなく、ゼロにならない為の対策を講じたいところです。
4、免除になるための条件
5年間の事業継続が終わっても、税金が免除になるわけではありません。
5年経ったら、社長はやめてOKですし、雇用の8割も意識しなくてOKです。しかし、株式だけは保有し続けてください。
それでは、どうすれば免除になるのかというと・・・
贈与税の納税猶予額が免除となる場合
①贈与者(先代代表者)が死亡した場合
②贈与者が死亡する前に、後継者が死亡した場合 等
相続税の納税猶予額が免除となる場合
①相続人(後継者)が死亡した場合
②相続人がさらに次の後継者へ一括贈与した場合(申告期限後5年を経過した後) 等
共通して納税猶予額が免除となる場合(相続税・贈与税)
①申告期限後5年以内に後継者(2代目)にやむを得ない事由が発生し、次の後継者(3代目)へ贈与した場合
※心身障害等やむを得ない理由があると共に、事業承継税制の適用を受ける必要があります
②申告期限後5年以後会社の事業継続が難しく、M&A等をした場合
※譲渡時の譲渡対価の額を基に納税猶予額を再計算し、当初納税猶予額のと差額免除
③申告期限後5年以後、後継者(2代目)が同じ事業承継税制を使って次の後継者(3代目)に会社を承継する 等
以上が免除になる為の条件となっております。免除の中には先代代表者が死亡した場合や後継者が死亡した場合という条件があります。
先代や後継者はもちろん、お互いの家族などとも情報を共有しておいた方が良いでしょう。
いかがだったでしょうか。
この税制は大きな節税メリットがある分、非常に多くの要件を満たしていく必要があります。要件を満たさなくなった場合、猶予を受けていた税金の一括納付及び猶予期間に係る利子税も合わせて納付することになってしまいますので注意が必要です。
今回ではご紹介しきれていないことも数多くあります。近日中にこの特例事業承継税制に関するセミナー等を開催予定としておりますので、もしお時間を頂けるのであればご参加の方をお願いします。
また、その他ご相談等ありましたらお気軽に当事務所までご連絡をお願い致します。