自主性が育てば、ムリ・ムダな労働時間がなくなる―現場に考えさせる、決めさせることの難しさ―Ⅸ(おしまい)
社員の自主性を重んじるドイツ企業で、いくつもの目から鱗が落ちる思いをした隅田貫氏(メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー)。
それぞれの違いについて彼は、日本型目標管理方策を「北風政策」と位置づけ、自主性に任すタイプのドイツ企業方式を「太陽政策」と呼びます。
それでは、ドイツ企業方式は、実際に現場ではどのように運営されていたのでしょうか。
問題はなかったのでしょうか。
隅田氏は次のように書かれています。
― 実際、私の上司は“超”のつく多忙な日々を送っていました。
フェイス・トゥ・フェイスで直接話をする機会など1カ月に2~3度あればよいほうです。
でもお互いの信頼があれば、まったく問題ありません。
メールもあります。
意思疎通は十分可能です。
そのため、報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)は、日本の会社時代から比べると極端に減りました。
それでも十分ビジネスは進みます。
自主性が育てば、ムリ・ムダな労働時間がなくなり、生産性も上がります。
もちろん、部下の自主性を育てるには、「ただ、任せておく」だけではことは前に進みません。
部下の不安にも寄り添いながら、距離を上手くとることではじめて、自主性が育まれ、士気向上、そして生産性向上へつながります。―
日本においてもドイツにおいても、それなりの企業の管理職が多忙なのは同じでしょう。
問題はその中身です。
報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)などの間接的業務、つなぎの部分に手間と時間がかかっていたのでは、確かに生産性は上がりません。
部下にある程度の判断や決済を任せれば、「報連相」にかかる絶対的な時間は減りますので、それで特に問題がないようなら生産性は自動的に上がるはずです。
で、おそらくそれで、特に問題は起こらないのではないでしょうか。
メール等の電子ツールをうまく使う、というのも現代ビジネスにおいて大事な要素です。
とかくムリ・ムダが多いといわれる日本企業。
隅田氏が紹介されたドイツ企業のように、余計な「管理」はできるだけ省いて、世界に伍していけるだけの「生産性」を手に入れてもらいたいものです。
おしまい