なぜ、『今日から』と言ってもらえないのでしょうか―現場に考えさせる、決めさせることの難しさ―Ⅱ

ドイツ企業で働くことになった隅田貫氏(メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー)は、ドイツ人の上司に挨拶に行ったとき、

「われわれにとって大切なことは、あくまで独立性です。(中略)

会社が誰のものかという議論は気にしなくてよい。

安心して、顧客のために良いと思うことがあれば、すぐに行動してください」

といわれます。

 

これに対して隅田氏は次のように応えました。

―そこで私が

「わかりました。さっそく明日から今のことを肝に銘じて頑張ります」

と答えると、当主はちょっと意外そうな表情をして、

「なぜ、『今日から』と言ってもらえないのでしょうか」

と言いました。

私は「わかりました、今日から頑張ります」と慌てて言い直しました。

 何百年も続く伝統のある銀行であっても、変えることに躊躇しないのです。

もちろん守るべき伝統もありますが、時代に合わせて変えなければいけないものは変える。

そういうカルチャーは日本ではなかなかないかもしれないと感じました。―

 

ここを読んでいて、海外企業が即断即決を重んじていることがよくわかります。

「明日から」でなく「今日から」、「後で」ではなく「今」というスピード感が大事なのです。

 

しかも「変えることに躊躇しない文化」は、日本の場合、特に銀行のような保守性の強い業界の企業においては、隅田氏の言われるようになかなか難しいのかも知れません。

現実にも、そういった金融機関の保守性に遭遇する場面は結構多いものです。

 

最近も、私の事務所が組織変更(法人化)するに際して、銀行への提出書類の多さと、ほぼすべてに「判子」を押し続けなければならない煩わしさに辟易したものです。

「自署押印」の文化は、そう簡単にはなくならないだろうな、と思わされました。

 

また、作業的なやりとりの打ち合わせの回数も頻繁でした。

これが戦略的な内容の会合ならまだわかるのですが、同じような作業的打ち合わせの繰り返しに

「金融業界は、まだまだ近代化からは程遠いな。」

と感じさせられる場面が多々ありました。

 

    「保守性」は、「おじさん」というキーワードでも結構言われているようで・・・・

つづく