ものごとは、心で見なくてはよく見えない―人生相談、自分に気付いていない人の「場」なのか?!―Ⅷ
自分の夫のことを、学歴が低いだの、収入が少ないだのと散々こき下ろす今回の「とんでも人生相談」。
回答者の最相葉月さんは、初めに私の予想通り「離婚すれば・・」と突き放し、「あなたには、収入もあることだし・・・」と、一旦、具体的な部分に話を持っていった上で、「ご主人も(あなたには)こりごりしていることでしょう・・」と、今回の相談の本質に迫っていく。
さて、ここからの展開が目の離せないところである。
最相葉月さんは次のように続けておられた。
― 一つだけ、心に留めておいていただきたいことがあります。
目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊されます。―
うーん、哲学的な回答である。
この相談者にこれが理解できるだろうか。
まさに、ここのところがまるでわかっていない人なので、今回のような相談をしてきたともいえるのである。
最相さんは、そのわかりやすい事例として、『物語』を提示しておられた。
それも童話である。
― サンテグジュペリの「星の王子さま」で、王子さまはキツネに言われましたよね。
「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」って。―
ここで「星の王子さま」が出てくるとは意外であった。
確かに最相さんが取り上げられたように、この人の相談には、ひょっとしたらこのお話が最もふさわしいのかも知れない。
私も読んだことがある。
「星の王子さま」は、名作童話としてたびたびいろいろな場面で引用されることが多い。
今回もその流れなのだろう。
しかし、私の印象では「星の王子さま」は高度過ぎる。
結構難しいお話なのだ。
「目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊されます。」という、抽象的で哲学的表現をわかりやすく説明する事例として引用されたのであろう。
しかし、これもなかなか難しいサンプルなのではないか、と思った。
つづく