自分にとって何がかけがえのないものなのか―人生相談、自分に気付いていない人の「場」なのか?!―Ⅸ(おしまい)

新聞の人生相談コーナーに投稿してきた、かなり身勝手とも思える女性相談者に対して、担当回答者である最相葉月さんは、「目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊される・・・」と、童話の「星の王子さま」を引き合いに出して説明されていた。

 

しかし、私から見れば、この引用は、今回のどう見ても価値観の低い相談者に対してちょっと高度に過ぎるかもなあと思ってしまう。

この相談者は果たして、最相さんの意図を理解することができるだろうか。

 

まあ、こういった人生相談コーナーにおいて、相手を突き放すだけの回答に終わるわけにもいかないのだろう。

何かしら前向きになれる姿勢を引き出すために、ポジティブなお話にもっていかざるを得ないのかも知れない。

 

最相さんの「星の王子さま」を引き合いに出された回答は、さらに次のように続いていた。

―(キツネの「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない・・・」というセリフを受けて)赤いバラのわがままに愛想を尽かして旅に出た王子様が、自分にとって何がかけがえのないものなのかに気づく有名な場面です。―

 

この女性相談者が「自分にとって何がかけがえのないものなのか」に気づくことができるだろうか。

まあ、この女性相談者に限らず多くの人が「自分にとって何がかけがえのないものなのか」には気がついていないのかも知れない。

 

かくいう私も、本当にそういう判断ができているのか怪しいものである。

ただ、この女性相談者のように、自分の中にあるモヤモヤした思いや不満といったものを、極端に他者のせいにしていないだけのことである。

 

最相さんは、今回の回答を次のように締めくくっておられた。

― え、まだ読んでいらっしゃらない。

だとしたらぜひ一度、お読みください。

離婚はそれから決めても遅くないと思いますので。―

 

とまあ、最後は軽く突き放しておられた。

最相さんも本音では、この人は「星の王子さま」を読んだところで変わるかなあ・・・と思っているのかも知れないが、回答者として、なんの希望も持たさないまま終わるわけにはいかないのだろう。

 

今回の相談を読んで、人はかくも自分のことに気がついていないものなのか・・・と思った。

その思いはタイトルの

「人生相談、ひょっとしたら自分に気付いていない人の「場」なのか?!」

に表現したつもりである。

 

人生相談コーナーにを読んでいると、

「この人は自分がいかに身勝手なことを言っているか、本当に気がついていないのだろうか。

それともわかっていて開き直っているのだろうか。」

と思わされることがしばしばある。

 

この相談者の女性も「星の王子さま」を読むことで、いたく感動し、旦那様に優しくなることを願うばかりである。

 

 

おしまい