じじいなった自分と、くたびれたコートの組み合わせ・・―コート、コート、コート・・・続き―Ⅸ(おしまい)
お直し代がかかることが、あとから判明した私の購入したダッフルコート。
それはいいとして、私には気にかかることがあった。
そこで電話をかけてきた彼に聞いてみたのである。
「ところでコートはもう送ってくれたの?」
・・・約束の期日は過ぎている。
「いえ、お直し代の決裁をいただいてからお送りしようと、まだこちらにございます。」
と彼。
これには、私はカチンときた。
「それはおかしいですね。
お直し代の件は後で発覚したことでしょう。
それを私が払うか払わないか確認してから送る、というのは、まるで試されているようで不愉快です。
それでは筋が通らないのではないですか。」
「すみません。おっしゃる通りです。すぐにお送りするようにいたします。」
と彼。
「そうしてください。」
と、最後はあまり四の五の言わないで電話を切った。
電話を切る際にも
「おっしゃるように、筋の通らない対応をして申し訳ありませんでした。」
と、再び彼は謝った。
微妙な行き違いのように見えるかも知れないが、それが当たり前の考え方(約束の品物は約束の期日までに送るという)であろう。
とまあ、こんな風にちょっとだけケチがついてしまったとはいえ、後日、件のダッフルコートは、無事私の手元に到着した。
まだ冬に入る前だったので、すぐに着る機会はなかったが、クローゼットの見える場所に、ハンガーに吊るしてこいつを羽織る日を楽しみに待つことにした。
さて、これが今季、コートにまつわる私の周りで起こった出来事である。
まあ、出来事といっても、なんだかんだ言いながら買ってしまったということに過ぎない。
ただ、今回の2枚は、長年自分の定番にしようと思って、購入を考えていた代物である。
それが偶然にも同じ季節に重なってしまった。
これは自分にも周りにも確約できるが、これでおそらく死ぬまでコートを買うことはあるまい。
コートにおける定番のラインナップはそろったのだ。
もう充分である。
「コートコートコートシリーズ」はもうお終いなのだ。
これ以上書くことはないだろう。(なんだか、自分に言い聞かせているようでもあるなあ・・・)
あとは、こいつら定番の逸品をどう着倒してやるかである。
おそらく定番のこいつらは着れば着るほど味が出てくるであろう。
もっとじじいなった自分と、ややくたびれたコートの組み合わせ・・・今から楽しみである。
なかなか着る機会がなくて・・・
おしまい