おどおどして顔色を見るからますますつけあがる―「学歴」・・・この古典的な悩みを考える―Ⅳ(おしまい)

「学歴」に関して、職場の先輩から見下したようないじめを受けているという新聞の人生相談欄への投稿者。

当初は気にもしていなかった自分の学歴に、そうやって日常的な攻撃にさらされているうちにコンプレックスを感じるようになってきて、だんだんその先輩のペースにはまってきてしまった、という。

 

この相談者も大変な思いをしているのであろうが、なんといっても、その変な先輩というのが厄介な存在である。

こういう輩(やから)にはどう対処したらいいのであろうか。

このコーナーの回答者である出久根達郎氏(作家)は次のように答えられていた。

 

― 相手が先輩だと思うから腹が立つのです。

つまらぬやつだ、とさげすむのです。

胸のうちでそう軽蔑し、しかし表情にはあらわさず、適当に返事をしておけばよいのです。

それが「おとな」の対処法だと心がけましょう。―

 

まさにその通りである。

「つまらぬやつ」もはなはだしい。

さげすむくらいでは済まない気もするが、出久根氏の言われる通り、「大人の対処」をしなければならないのだろう。

 

ただ、ちょっと気になるのはこの相談者の気の弱さというか、そうやってつけこまれるマインドについてである。

その点に関して出久根氏は次のように指摘しておられた。

 

― 肝心なことは、相手のペースに巻き込まれないよう用心すること。

学歴にこだわらないことです。

あなたが相手を嫌がっていること自体、学歴を意識している証拠です。

おどおどして、相手の顔色を見るから、相手はますますつけあがるのです。

びくつかない。

堂々と構えている。―

 

おそらく出久根氏の指摘される通りなのだろう。

この相談者の彼がおどおどしている様子が目に浮かぶようである。

 

彼は、出久根氏の言われる通り、堂々と構えて、学歴などにこだわらなくなれるだろうか。

こういう性格の人間には、なかなか難しい試みだろうと思う。

 

この相談者の彼もそうだが、いじめている先輩とやらも、もう少し自分の生き方をどうにかしないと、そのうち大きなしっぺ返しを食うことになるぞ、と警告したい。

「学歴」に関してこんなこともあるのか、といささかあきれてしまった一件でした。

 

           つまらぬことに押しつぶされないようにね。

おしまい