まあ、先生がそういうのなら・・・―お節介事務所になるのか?「一応やってみましょうか?」のすすめ―Ⅳ

            気楽にいきませんか?

 

 

税務以外の仕事として手掛けたのが、もめている相続の仲裁役であった。

これは当事者同士で話し合っても、ほぼ解決することはない。

落としどころを第3者が判断して示すしか私には方法がないように思えるのである。

 

というわけで、私の事務所を舞台として行なわれた相続の話し合いは、一触即発の極めて険悪な危機状態から、双方の意見をきちんと聞くことにより、一定の落ち着きを取り戻したのである。

聞きながら私は、お互い主張している中で無理くりと思われる部分を洗い出す。

 

双方の意見を聞き終えたところで、私はそのお互いが主張している無理くりな部分を指摘し、そこを少し妥協しなければ、落としどころが見つからないことを伝える。

そう伝えたうえで、こんな風に考えてみてはどうですかね?と、具体的な落としどころを示すのである。

 

そこでは、客観的に見て妥当と思えるラインを示すのだ。

そうすると、不承不承ではあるが

「まあ、先生がそういうのなら・・・」

と、双方が歩み寄ってくれる。

お互い100%納得していないことは承知の上だが、それは仕方がない。

 

もしここで、どうしても納得がいかない、と決裂したならば、私は諦めることにしている。

私の裁量では無理だと思うからだ。

 

しかし、ここでもう1回ダメ押しをする。

「私の仲裁で納得がいかないということであれば、あとは弁護士さんの出番、ということになりますが、そうなれば、双方とも大変な面倒を抱えることになりますよ。時間と費用も嫌になるほどかかると思いますがそれでもいいんですね。」

と伝えるのである。

 

そうすると、相手の態度が変わる場合もある。

頭の中で計算すると、確かにその通りだ、と思うのであろう。

 

そこで、再び私の落としどころに戻って、なんとか妥協していただく場合もあるし、やはりダメなときもある。

そこから先はクライアントさんの自由意思の問題なので、それ以上深追いすることはしない。

 

これが相続における、私のお節介事務所介入の一つのサンプルである。

もちろん、こういったケースだけでとはいえないが、大体似たようなプロセスをたどることが多いのだ。

 

 

 

つづく