当事者だけで話し合っても解決することはない!―お節介事務所になるのか?「一応やってみましょうか?」のすすめ―Ⅲ
基本的に税務以外のことには手や口を出さない、というのが一般的な税理士の姿勢。
私の父も、同じような姿勢を貫いていた。
しかし、私がそこになにかしらの違和感を覚えていたこともまた事実だったのである。
私が、そういった一般的な税理士のスタンスというものを具体的に破ったのは相続の案件であった。
親族間でどうにもこうにも揉めて収拾がつかない、といった事例が身近に起こった。
この案件が揉めていたのは、普段の兄弟間のコミュニケーションが取れていないことに主な原因があった。
双方の様子を見ていると、お互いの不信感は頂点に達しているように思えた。
こういう場合、当事者間で話し合おうとしても、不信感が先に来ているので、相手の言葉がほとんど耳に入らない。
私が経験したところでは、ここまでくると、当事者だけで話し合っても解決することはない、というのが偽らざる見解であった。
そこで、双方の親族に事務所に集まってもらって話し合うことにした。
場の雰囲気はまさに一触即発である。
目の前の灰皿を相手に投げつけんばかりの殺気が漂っている。(実際には灰皿は置いてありませんでしたけれど・・・・)
まず、双方の言い分を思いっきり言ってもらうことにする。
ただ、そうするとお互い思うところがいくらでもあるために、相手の言葉をさえぎって口を挟もうとする。
それを私が押さえ込んで、とにかく言いたいことを全てお互いに吐き出させるのである。
そうやって、お互いの言いたいことを存分に言わせた上で、それを客観的によーく聞いていると、私から見ていて
『ここはちょっと無理があるなあ・・・』
という点が浮き彫りになってくる。
そこで私が初めて口を開くのだ。
「お兄さんのおっしゃっていることはよくわかるのですが、ここのところはちょっと無理があるのではないですか?
弟さんの言い分もその通りとは思いますが、そこを無理矢理押し通そうとするのは難しいですよね。
お二人ともどう思われますか?」
といったように、判断基準を示す。
すっきりと晴れた青空のようにはいかないものでして・・・・
つづく