なにかしら微かな違和感が・・・・―お節介事務所になるのか?「一応やってみましょうか?」のすすめ―Ⅱ
「クライアントさんに起きる、いろんなあれこれにはできるだけ首を突っ込まない方がいいよ。税理士は税務のところだけに守備範囲を決めておいた方がいいよ。」
という、先輩税理士のアドバイスを、最初は納得したものの、結局守ってこなかった私。
そんな私の事務所経営というものは、どのように行なわれているのであろうか。
先輩税理士が上記のようにアドバイスするくらいだから、多くの税理士がそのような方針で自らの業務を進めていたのだろうと思う。
事実、私の父(父も税理士。私は2代目です。)もそういったスタンスを取り続けていた。
或るとき、父のもとで働いていたベテラン職員が報告に来た。
「先生、○○公社の理事会が借入金の返済問題で意見が対立して、中でだいぶもめているらしいですよ。昨日、理事会が開催されたようですが、かなり紛糾したと聞きました。ご報告まで・・・」
○○公社というのは、事務所のクライアントで、当然借入金などの経済問題は事務所にも関係があるはずである。
しかし、父の見解は違っていた。
「それは向こうの問題だから一切関わり合うんじゃないぞ。結論を向こうが出すまで静観しなさい。」
それを聞いた職員も心得たもので
「そうですね。うちは余計なことに首を突っ込まない方がいいですね。」
と答え、その話はそこで終わったのである。
なんということのない会話だったし、話の細かい中身もはっきりとは覚えていない。
しかし、父がそういうスタンスで仕事をしているのだ、ということは理解できた。
父は、税務については専門家としてしっかりと指導するが、そのほかのことは自分の守備範囲ではない、という点がハッキリとしていたように思う。
それがいいとか悪いとかいうつもりはない。
ただ、このなんでもないやりとりが今でも私の頭に残っているということは、なにかしら微かな違和感を覚えていたからであろうと思う。
私の中に
「うーん、これは何かが違う!」
という思いがあったのだろう、と思うのである。
とは言えない、我々のスタンス。
つづく