完全に引きこもり、穴倉に入ったような状態―台風の夜,ただ一人で戦った静かで長い時間―Ⅰ
今月(2020年9月)の初め、台風9号が日本を襲ってかなりの被害を出した、というニュースが冷めやらぬうちに、今度は
「フィリピン近くの海上で台風10号が発生しました。」
という予報が入ってきた。
しかも、
「日本近海の海水温が高いので、日本列島に近づくにしたがって巨大化します。」
と、穏やかならぬ予想が知らされる。
そのうち
「この台風10号は、かつてないほどの勢力に発展して上陸の可能性も出てきています。」
と、報道がだんだんエスカレートしていく。
「いやだなあ・・逸れてくれないかなあ・・」
と、心の中で願っていたが、ほぼ進路予想図通りに日本列島に近づいてきた。
日本列島に最接近するのは日曜から月曜にかけてらしいので、月曜日、事務所を開けるかどうかも微妙な判断になってくるのだ。
金曜日、土曜日まではどんよりとしたお天気程度で何とか収まっていたが、日曜日から次第に荒れてきた。
午後には断続的にかなり荒れた天候になってきたので、副所長のSさんに電話をして、月曜日、事務所を休むことを決める。
午前中、それほど荒れていないうちに、ベランダの鉢植えやテーブルいすなどをしまい込み、家じゅうの雨戸を閉めた。
リビングの一部と電動で開け閉めするダイニング前だけは、最後の最後に閉める予定にして開けておいた。
私の家からは、目の前に海が見えるので、ギリギリまで観察しようという腹づもりでいたのである。
夕方、周りが暗くなる頃になると、いよいよ外の様子が荒れてきた。
リビングの雨戸も閉め、電動シャッターも下ろした。
電動シャッターは、ボタン一つで開け閉めできるため楽なのだが、停電になってからでは動かなくなるので、今のうちに下ろしておく。
電動シャッターを下ろすと密閉状態に・・・
さあこうなると、完全に引きこもり、穴倉に入ったような状態になる。
海っぱたの私の家は、もろに風雨が叩きつけるために、次第に荒れてくる外の気配がよくわかる。
そういえば、以前、マンションで暮らしていたとき、驚くほど外の天気の荒れる様子が伝わってこないことがわかった。
堅牢な作りのマンション暮らしはこういう災害には強いのかも知れない。
風呂場から外をのぞく。このときはまだそんなに荒れていません。
つづく