コート、コート、コート・・・・コートについて思い出すことⅧ
書き始めて気がついたことだが、コートに関してこんなにいろいろ書けるとは思わなかった。
コートという重衣料には、やはりほかの着るものとはやや違った少し重たい歴史が詰まっているみたいだ。
会計事務所の2年間の勤務を終えたあと、私は大学院に戻った。
大学院は少数のゼミ形式で、久しぶりの学生生活に、なにか解放されたような気分を味わったことを覚えている。
その気分に合わせてか、ちょっとカジュアルなコートが欲しくなった。
とはいえ、大学院生でもあるので、そこまでラフな恰好もできない。
当時、院生は学部生との違いを明確にするために、登校の際は一応ジャケットを羽織り、ネクタイはきちんと締めるようにしていたのである。
当然、勤め人時代から持っていたビジネス系のコートを利用していたが、前述のようにちょっと学生気分に合ったコートも欲しくなった。
そこで探したのが、ダッフルコートだった。
ダッフルコートは以前にも書いたように、大学生のときKentブランドのグレーのものを買ったことがあったが、社会人を経て大学院に戻った頃は、もうとっくに手放していたのである。
Kentのダッフルは、フロントについているループが革製で、そこに通すボタン代わりの小さな棒状のもの(「トグル」といいます)は、ホーン(水牛の角)製のものだった。
皮製のループは味があって悪くないのだが、残念ながら経年劣化してしまう。
特に、ループ状の細いものは劣化してしまうと硬くなって、ある日ボロッと崩れるように切れてしまうのだ。
そんな経験もあって、今度買うときは、色はキャメル(ベージュという言い方もします)ループは麻ひも、トグルは「浮き」の形状をした木製、と決めていた。
これが、海軍使用の最も原型に近いものらしい。
これは極めてオーソドックスなタイプのはずなので、すぐに希望のものが買えると思っていたのだが、探してみるとこれがなかなか見つからない。
ダッフルコート捜索は困難を極めたのである。
これは映画で使われたダッフルコート。若い頃のジャックニコルソンとアートガーファンクルが気分を出しています。
つづく