基本的な決め事やルールを破らない程度に楽しんで―「外し」の楽しみ・・ファッションはド直球だけじゃつまらない―Ⅸ(おしまい)
さて、「外し」についていろいろ書いてきました。
とはいえ、そもそも男のビジネスウエアについては、当たり前といえば当たり前なのですが、どうしても「外さ」なくてはならない、ということはありません。
普通にちゃんとしていればいいのであって、いいとこ見せようとして無理くりに「外し」たところで、いい結果など得られるわけがないのです。
また、カジュアルについては、「外し」という考えそのものが必要なはずもなく、「色」にしろ「小物」にしろ好きなように楽しめばいいのです。
ビジネスウエアで「外す」場合にも、必ず原則というものがあります。
それは「外し」以外の部分は基本に忠実であること、ということです。
ここが崩れてしまっていると「外し」もなにもありません。
最近の悪い例をあげますと、ファッション評論家のくろすとしゆき氏がいうところの「フェイクボタンダウン」というシャツがあります。
これは、BD(ボタンダウン)シャツではあるものの、ボタンの色を変えたり、派手なステッチを入れたり、襟高をやたら高くしたりと、通常のBDシャツにかなりアレンジを加えたものです。
くろすさんは、ご自分のエッセイの中で、このBDシャツについて、口を極めて非難しておられましたが、私も同感です。
ダサいとしか思えません。
「外す」或いは「遊ぶ」というのは、そういうことではなくて、基本的な装いはきちんとした上で、それに「色」とか「小物」とかでアクセントを加える、ということです。
基本そのものを壊してしまっては、元も子もありません。
アクセントが目立ちすぎたり、基本の部分を犯してしまっては「外し」とは言えなくなってしまうのです。
カチカチのビジネスウエアに対するささやかな抵抗、遊び、息抜き、とでも言ったらいいでしょうか。
TPOといった基本的な決め事やルールを破らない程度に「外し」を楽しんでみてください。
これは少しくだけた飲み会だったので、デニムシャツにネクタイ、オレンジのチーフで遊んでみました。
おしまい