レザーが好きでして―コスパがいいと思って買ったんだが・・・・―Ⅶ

東京にいるときのカミさんは、いつも比較的機嫌がいい。

特に、昔からのお友達とかと会っているときとかはそうである。

今回私は、そのチャンスを狙うことにした。

 

カミさんが東京で会うお友達というのは、東京に住んでいた頃、一緒に子育てでお互い助け合った奥さんたちやその子供さんたちである。

私たち一家はその後、東京を引き払い鹿児島に帰り、もう20年余りの歳月が流れたが、今でもこうやって、時間を合わせて会っているのだ。

 

その家族同士、うちの一家が上京した時など時間や場所を決めて交流を深めているのである。

子育てを一緒に苦労した仲というのは結構絆が深いらしく、いつ会ってもすぐに気の置けない雰囲気になれるらしい。

 

子供たちはともかく、こういう場に旦那が登場することは珍しいのだ。

今回は、私も上京したということで、4家族が集まったその場に交ぜてもらうことになったのである。

 

まあこういう場を利用して、着るものに対する厳しいチェックをスルーしてしまおう、という姑息な手段に、かなり問題はあるものの、とにかく決行した。

皆さんが集まっている場に

「やあやあ遅れてどうもすみません。」

と、緊張しながら入っていく。

 

「あら、あなた、そのブルゾンどうしたの?」

と、聞かれたら

「いやあ、アハハ」

とごまかすつもりだったが、そんな質問は全く飛んでこなかった。

気づいているのかいないのか、まるで意に返さない風にカミさんは屈託なくみなさんと話している。

 

結局その日お開きになって、それぞれの家族に分かれて帰路についても、ブルゾンに触れられることはなかった。

まあ、禁じ手のようなちょっとズルいやり方を使わしていただいたものの、お気に入りのブルゾンはこうやってカミさんの目をスルーしたのである。

イギリスは結構寒かったのですが、このブルゾンのお陰で助かりました。

 

つづく