知り合いと友人と親友と―俺の人生に「友情」はあったのか?―Ⅲ

小学校時代、これぞ「親友」と思っていたA君とも別れ別れになり、私立中学に進んだ私は、部活で「柔道部」に入った。

ここで仲良くなったSとは、その後も長く付き合った。

 

私が彼の家に行くことはあまりなかったが、彼は私の家によく泊りに来た。

それも一晩や二晩ではなく、夏休みなどは結構長逗留したりもしたのだ。

 

私の実家は、学校のあった鹿児島市内からは遠く離れた田舎にあった。

Sの家はさらにその鹿児島市を挟んで県の反対側にあったので、そう簡単に行き来できる距離ではなかった。

そんな私たちに限らず、当時は、特に何の疑問もなく、友達の家に寝泊まりしたりしていたと思う。

 

部活が一緒、お互い文学少年、好きな女の子の話などもし合う仲で、私は「こいつこそは一生付き合っていく親友」と思っていた。

その後、付き合いは大学生まで続き、私にとって「親友」といえばSだろうな、と思っていた。

 

しかし、ここで決定的なSの裏切りにあってしまった。

当時、同じ大学の私が付き合っていた彼女に奴が横恋慕(古い言葉だなあ・・・)し、奪ってしまったのである。

 

殴り合いの修羅場といった、まさに典型的な青春の1ページのような、私にとってほろ苦いドタバタ劇を経て、Sとは決定的に決裂した。

若かった私は「あいつだけは、絶対一生許さん!」と、憎悪に燃えた。

 

あの頃から、50年近くの歳月が流れた。

その後の人生では、あの時にまさる修羅場にも何回も遭遇した。

それに比べれば、まだ結婚もしていないなかでの、彼女を取った取られたなどというのは、世間的に見れば

「それほど重たい話でもないじゃん。」

ということかも知れない。

 

しかし、そういった時の流れという「時効」を経てでも、Sとの友情が戻ることはなかった。

途中、何回かSの方から友情の修復を持ちかけてきたことはあったが、私がどうしてもその気になれなかったのだ。

 

夕方、茜色の雲たち。本文とは何の関係もありません。

 

つづく