いくら支援を表明しても「笛吹けども踊らず」では?―事業承継支援、というけれど・・・―Ⅲ

人は起業するとき

「この事業を未来永劫続けたい。」

などと思う人は少なく、

「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」

というのが妥当な線ではないのか、とすると、事業承継支援も少し検討し直した方がいいのではないだろうか、というのが、私の考えです。

つまり、事業が代々続かないと困る、と考えているのはこちらの都合であって、当の事業を行なっている方は、それほど深刻に考えているわけではない、ということです。

 

まあ「こちらの都合」といっても、勝手にそう考えているわけではなく、もちろん日本経済の行く末を憂慮しているのは間違いのないところです。

しかし、少し視点を変えてみないとこの問題の本質的な解決には至らないということです。

現在、露呈している後継者問題がこのまま解決しなければ、やがて120万社以上が失われ、それに準じて雇用も失われる、と言われています。

だから、

「なんとしてでも事業の承継を軌道に乗せなければ。」

というわけです。

 

しかし、アンケート結果にあるように、

「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」

という人が38%もいるという事実です。

これつまり、何とか頑張って事業承継を行ない、自分の興した事業を続けていきたいと思うか否かは、その事業が、後々まで残したいほどうまくいった事業だったか、或いは魅力的な事業だったか、という後付けの問題なのではないでしょうか。

 

商売を始めるとき、誰もそんなロングレンジで考えているわけではなく、大してうまくもいかなかった場合とか、近年になってだんだんジリ貧になってきた場合は

「どうせ継がしても苦労するだけだ。それよりは俺の代で畳んだ方がいい。そもそもそのつもりだったのだから・・」

と考えるでしょう。

そうなると、事業承継そのものに積極的に向き合う気がないわけです。

 

ということは、国がいくら音頭を取っても、我々税理士や金融機関が支援を表明しても「笛吹けども踊らず」状態になってしまうのではないでしょうか。

アンケート結果もそれを表しています。

 

 

つづく