「地縁血縁」関係を拠り所としたビジネスモデル―「それこそ」がよかった時代は、実は「それでも」良かった時代だった―Ⅰ
約35年前東京で友人と会社を設立し、10年ちょっと経営したあと、家族を連れて田舎に帰った。
ということは、田舎に帰って今の仕事(税理士)に就いてもう25年になる。
あっという間だったような気がする。
さて、久しぶりの田舎生活の私には結構な試練が待っていた。
東京にいた頃と、ビジネス感覚がまるで合わなかったのである。
最初は、何が合わないのか、さえピンとこなかった。
ひたすら違和感だけを覚えつつ数年が過ぎた。
数年のときを経て、その「違和感」の正体がだんだんと私にも理解されてきたのである。
田舎に帰ってとにかく言われたのは、「地縁血縁」関係を拠り所としたビジネスモデルを大事にしろ、ということであった。
当時はそうはっきりと認識していた訳ではないが、今考えればそういうことだったのである。
何故そんなに馴染まなかったのかといえば、東京におけるビジネスは「地縁血縁」など、一切無関係の中で展開していたからにほかならない。
またそれが当たり前の世界であった。
一般的にビジネスと言うものを考えれば、そちらがノーマルであって、地縁血縁関係に依拠している方が特殊なのである。
しかし、田舎における地縁血縁関係を基軸としたビジネスモデルに対する確信は強固なもので、これに抗うのはなかなか骨であった。
特に私の母からのプレッシャーは強烈で、私や私の妻にも
「あの子たちに、田舎のしきたりや考え方を教え込んでやらないと・・」
といった、教育的指導とも思えるようなやり方で押し付けてくる。
それはほとんど
「あなたは、使命感でも持っているのか?」
と疑いたくなるほど強硬なものだった。
つづく