移民が一生懸命働けば、国全体の富は純増するー移民について考えるーⅡ
外国人労働者の受け入れが何故一般労働者に不利益をもたらすのか・・・
その理由について、米国の第一線の労働経済学者ジョージ・ボージャスが著した『移民の政治経済学』(白水社、2018年)で、米国の経験を例に、主に経済的観点から論じられている、ということである。
その引用が以下のように取り上げられていた。
― 移民が労働人口に加わることで、富は移民と競合する立場にある労働者から移民を使う側の経営者に移転される。
ただ、経営者が享受する利益は労働者が失う損失を上回るため、移民は「移民余剰」を生み出す。
つまり、受け入れ国の国民の全体の富は純増する。
ただ移民余剰は小さく、年間でおよそ五百憶ドル程度だ。
一方で同じ分析結果によると、五千億ドルの富が労働者から企業に移転する。―
この理論は、一見分かりやすいようで難しい。
まず、競合する立場の労働者から富を奪う、と言うが、例えば日本の場合、まず競合するような職場に日本人労働者が集まらないのだ。
ということは、直接的には競合していないのではないか、とも考えられる。
また、富は経営者に移転する、というのは、移民の方が安い労働力のケースであって、日本のように「外国人技能実習性」という名目で働かせた場合、日本人と同一賃金でなければならない、という法的拘束力が働くために、人件費的にも別に得にはならないのである。
とはいえ、移民(日本の場合「外国人技能実習性」)が一生懸命働けば、上述のように国全体の富は純増するのだろう。
それでも、様々な問題が想定されるのである。
つづく