昭和の時代、働くみんなの楽しみ「社員旅行」―観光産業をモデルに日本の生産性の低さを考える―Ⅰ
京都在住のイギリス人アナリストであるデービッドアトキンソン氏は、外国人の俯瞰的な立場から日本の産業や文化などについて、鋭いコメントや批評を行なっておられます。
中でも特に日本の観光産業を取り上げ、日本の産業構造全体に及ぶ問題点を指摘しているのです。
そのアトキンソン氏が最近書かれたコラムの中で、やはり同様の指摘をされておられたので取り上げてみたいと思います。
アトキンソン氏は、従来の日本の観光産業がどのような体質だったか、という分析から、この産業の抱える課題を指摘されています。
―日本の観光業は、伝統的に生産性の低い業界でした。
なぜ観光業の生産性が低かったのか、その原因にはさまざまな歴史的な背景があるのですが、中でも、人口激増がもたらした歪みが大きいように思います。
少し単純化しすぎかもしれませんが、人口が増加していた時代の日本の旅行の主流は、社員旅行や修学旅行など、いわゆる団体旅行でした。
つまり、都市部から大量の人間を地方に送り届けるという行為が、日本の観光業界の主要な仕事だったのです。
マス戦略です。―
今の若い人には、あまりピンとこないかも知れませんが、アトキンソン氏が言われるように、昔は団体で出かける社員旅行が主流でした。
また、それが当時働くみんなの楽しみでもあったのです。
私は、税理士として2代目ですが、父の時代は、顧問先企業が担当税理士である父も誘って一緒に出掛けることもしばしばありました。
主に国内の温泉地などが多く、男性社員中心のメンバーは、旅行先で朝からビールを飲み、夜は宴会のあとマージャンなどに明け暮れたようです。
つづく