量の時代は量の戦略、質の時代は質の戦略・・・―観光産業をモデルに日本の生産性の低さを考える―Ⅱ

会社のみんなと繰り出す「社員旅行」・・・なんだか今では考えられないような風景ですが、昭和の時代までは全国でそんな団体旅行が当たり前のように繰り返されたのです。

迎える観光産業側も、そういったタイプの客層に焦点を合わせていました。

 

私が東京でマーケティングリサーチの会社を運営していた時、リゾート会員権に関する案件を手掛けたことがありました。

30年近く前、昭和の終わりから平成の初め頃の話です。

 

当時でも、

「もう男性中心の団体旅行では頭打ちである。これからはファミリーや女性を取り込んだ少人数をターゲットにシフトしていかなければならない。」

といった内容のレポートを提出した記憶があります。

あきらかに人々のニーズは変わりつつありました。

 

そう考えると、今頃デービッド氏にこんな指摘を受けるということは、この30年間くらい、日本の観光産業の問題点は「わかっていたのに手つかずだった!」ということになります。

どうしてこんなことになったのでしょうか。

アトキンソン氏の分析は続きます。

 

―マス戦略なので、旅行先の地方でお客さん一人ひとりが落とす金額は少なかったのですが、やってくる人間の数が多いので、ある程度まとまったお金が地方にも落ちるようなシステムができていました。

 当時の交通機関や旅行会社は、送り届ける人間の数を盾に、地方の受け入れ先の料金を下げさせました。

その結果として、主に旅行会社や交通機関が儲かる仕組みが出来上がっていたのです。

これはこれで、人口増加時代ならではの、賢い儲け方だったと言えると思います。―

 

これはしばしば指摘されることですが、量を追及する時代は量の戦略、質の時代は質の戦略・・・この辺の切り替えが必要なのです。

アトキンソン氏も、日本における「量の時代」の経営戦略については一定の評価をしておられます。

 

 

 

つづく