心ならずも麻布警察署見学の件―事情聴取室は狭かった・・・―Ⅳ(おしまい)
社員の記憶にあった、今回大騒ぎになっている件(くだん)の会社・・・
私は、その会社名には全く覚えがなかったが、そういう取引があったことは何となく覚えていた。
「じゃ、悪いけどちゃんとその社名、調べてくれる?」
と頼んで電話を切った。
年間、何百社と取引があるので、彼も正確なフルネームの社名は覚えていなかったらしい。
社員の彼も、休日のこの日は自宅にいたので、調べるのに少し時間はかかったが、今年1回だけ取引のあった会社ということははっきりしたのである。
詐欺でもなんでもなかったのだ。
結局、怪しいと思って、こっちで勝手にすったもんだしたその会社は、私の友人が経営する東京の法人だった。
スポットで1回だけ取引のあったその会社は、別の税理士さんが顧問をしているので、決算に際して支払いのあった私のマイナンバーが必要になったのである。
ただ、送付された文書には一切その辺の事情が書かれていなかったために、私が全く思い出せなかっただけのことだったのだ。
とはいえ、しっかり確認しないで、マイナンバーを教えたのは迂闊だった、と言わざるを得ない。
たまたま、鹿児島にいる社員に電話をしていなかったら、おそらくいまだに不明のまま、やきもきしていたことだろう。
偶然ではあったが、Nさんに
「鹿児島の社員さんに動いてもらったらどうですか?」
という、電話をもらって助かった。
問題が解決したところで、すぐ麻布警察署のNさんに電話して
「実はこれこれこんな訳で、あの件は無事解決しました。ご心配をおかけしてすみませんでした。」
と謝罪した。
さんざん気を揉んだ約半日、こういう職業を生業(なりわい)としている身としては、お恥ずかしい次第である。
今後に向けてよい教訓になりました。
おしまい