心ならずも麻布警察署見学の件―事情聴取室は狭かった・・・―Ⅲ
麻布警察署の迷路のようなフロアをぬけ、ガタガタのエレベーターで下に降り、おっかなそうな入口番人の横を通って外に出た私が「参ったなあ・・・」と、とぼとぼと歩いていると、先ほどのNさんから電話があった。
「考えてみたんですが、鹿児島にいる社員さんにその投函した郵便局に行ってもらったらどうですか。」
との提案である。
地元にいる社員には、休日に申し訳ないと思ったが、鹿児島に電話して投函した地元の郵便局に行ってもらうことにした。
電話には出なくても、窓口にまで来た人間を邪険に扱うことはないだろう、と、私もNさんも考えたのである。
地元の郵便局の近くに住んでいそうな社員の家にまずかけてみた。
残念ながら彼は電話に出ない。
二人目の社員にかけたら、ラッキーにも出てくれた。
休みの日に済まぬ、とまず詫びを入れて用件を伝える。
「実はこれこれこんな訳で、ややこしいことになりそうなんだ。すまないが、郵便局に行って投函した封筒が、まだもしそこにあったら回収してくれないか。」
と頼む。
すると彼は
「わかりました。いいですよ。すぐ行きましょう。」
と二つ返事で引き受けてくれた。
「それではメモを取りますから、相手の会社名を詳しく言って下さい。」
というので、私はゆっくりと
「港区○○の有限会社××だよ。」
と、件(くだん)の会社名を伝える。
そうしたら、彼が「ん?」と一呼吸あって
「所長、待ってください。それって、今年1回だけちょこっと取引のあったあの会社じゃないですか?」
というではないか・・・
つづく