民主主義が崩れゆく瞬間を目撃しているのか?―民主政治の危機、その脆弱さについて考える―Ⅱ
「民主政の危機」というタイトルの民主主義の危機的状況について、細谷教授は冒頭次のように書かれている。
―世界の民主政-民主主義に基づく世界各国の政治に今、巨大かつ重大な変化が生じている。―
そして、そのことに関する著作として「民主主義の死に方」(S・レビッキー、D・ジブラットハーバード大学教授)と「民主政の終わり方」(D・ランシマンケンブリッジ大学教授)の2冊を紹介されている。
これらの著作に対して細谷教授は次のように述べられている。
―米国トランプ政権が誕生し、中国やロシアのような権威主義体制の国家が影響力を強めている。
こうした中で、独裁主義的な指導者が民主主義のルール拒否、対立相手やメディアの否定、暴力の許容などの行動に走ることで、民主政に不可欠な条件が侵食され、政治が堕落する様子を両書は見事に描写している。―
私は、これらの著作をまだ読んではいないが、トランプ政権や中国ロシアについてはその通りだなあ、と思わざるを得ない。
学者にもこれらの状況に危機感を覚え、そういった研究を進める人たちが出てきている、ということだ。
彼らの抱く危機感は「我々は今、民主政が崩れゆく瞬間を目撃している」という問題意識である。
その点について細谷教授は次のように書かれていた。
―最も伝統ある民主政国家であるはずの米国が、そのような危機に直面していることに彼らは動揺しているのだ。―
この点は彼らのような学者だけではあるまい。
一般の人たちも、かなりの危機感を覚え始めているのではないだろうか。
それでも、民主政国家の多くの人々は
「民主主義が、すぐに崩壊することなどありえない。」
と、思っているだろう。
私自身そう思っている。
ところが、よく考察してみると、意外に危うい民主主義の現実について、このコラムではこの後触れられている。
つづく