成功体験を捨て問われる日本企業の対応能力―ロジカルシンキングも限界、クリエイティブな思考がものをいう時代―Ⅵ(おしまい)
いつも天才の登場を待たなければ、時代は変わっていかないのか・・・・
私のこの疑問に対して筆者は次のような見解を述べています。
― デザイナーの才能は先天的なものと思われがちだが、米国では後天的才能と見なされる傾向が強い。
教育によって「デザイン思考」は身に付くと考えられているのだ。
一例を挙げると、米アップルとのつながりが深いコンサルティング企業が、アップルのデザイナーの才能は後天的なものと感じ取り、その育成のメカニズムを体系化し、クリエイティブ人材を育てるためのツールとして活用している。―
「デザイン思考」の根幹をなす前述の「個別機能よりも製品群全体での調和」、「論理ではなく共感」、「まじめさだけではなく遊び心」、「モノよりもモノをもつことの意義」・・と言った一連の基本コンセプトは、天才的な閃きや着想によるのではないか、と思いがちです。
つまり「先天的なもの」との印象が我々には強いと言えましょう。
しかしここでは、決してそうではない、との見解がかかれています。
クリエイティブな人材も「育てる」ことによって後天的に作られるというのです。
おそらくここまでの発想は、PDCAサイクルやロジカルシンキングが主流の日本企業には、まだないのではないでしょうか。
・・・と、思っていたら、意外にもそうではないことが最後に述べられていました。
―「古くて重い変化を嫌う」日本企業の中にも、「デザイン思考」への関心が高まりつつある。
変化せずとも過去の蓄積によって何とかやってこれた企業も、人工知能(AI)の進化に代表される技術革新によって変革を余儀なくされているからだ。―
この高まりつつあるという「デザイン思考」への関心が、今後どのような形で具体化するのか、注目していきたいところです。
これまで過去の大きな成功体験が大企業に限らず、日本の企業の発展進化を妨げてきました。
しかし、おそらくもう世界のビジネスシーンは、待ったなしの状況だと思われます。
日本企業の、というより日本人全体の対応能力が問われている、と覚悟して変革に向き合うべきときでしょう。
おしまい