「交換条件」という錯誤―男の「生存条件」晩年を穏やかに過ごすために―Ⅱ
一人では、ちょっとした身の回りのことすらできなかった私の父の言い分はたぶんこうだったのでしょう。
父には
「俺は人並み以上に一生懸命稼いで食わしてやっているんだから、仕事にだけ専念させて、身の回りのことくらい全部面倒見てくれ。」
という理屈があったのだろうと思います。
つまり、父にとって
「俺は、私生活においては何もしない、したくない。」
というのは、母に対する言わば「交換条件」だったような気がします。
ただ、ちょっと冷静に考えればわかることですが、身の回りのことがちゃんとできるか否かは、「交換条件」になどなり得ません。
そんな考え方をしていれば、自分が困るだけだからです。
私生活において身の回りのことがちゃんとできるか否かは、「交換条件」ではなく、自らに課す「生存条件」なのです。
そこのところがわかっていないと、奥さんに先立たれたとき、しばしば世間でよく見られるような悲劇が起こるのではないでしょうか。
そもそも、配偶者に先立たれた後の、「生存率」というか「長生き率」は圧倒的に女性の方が勝っています。
男性の、奥さんが先に亡くなった後の生存年数が極端に短いことを見ても、元気なうちに自らの「生存条件」を整備しておくことの重要さがわかります。
そもそも、経済的な基盤をある程度確保していれば、女性は一人で生きていけます。
スーパーで買い物することも、料理を作ることも、掃除も洗濯も身の回りのことは、もともとすべてなんてことなく自分でできるからです。
それがおぼつかないのが我々男性陣なのです。