「資格」ではなく「ポジション」で考えてみよう―税理士としての私のスタンス― Ⅶ
さて、そこで私は税理士という職業がどうあるべきか考えました。
散々考えた末、私の出した答えは次のようなものです。
税理士としてのあるべき姿を「資格」ではなく「ポジション」で考えようと。
「立ち位置」「立ち場」といってもいいかも知れません。
つまり、「資格者」ではどうしても「経営」の外に立って、専門資格の範囲からしかものが考えられないし、意見を言うこともできません。
しかし、税理士をひとつの「ポジション」と位置付ければ、「経営」に対して、自在にコミットすることが可能になります。
税理士を、
「税務や会計の専門家であると同時に、多くの業種を横断的に俯瞰できる特殊なポジションを与えられた人」
と定義すれば、その使い道はぐっと広がるわけです。
「いろんな商売を見ているのだから、俺の業種以外のあれやこれやいっぱい知っているのでしょう?」
というのは、経営者からよく聞く我々に対する期待の一つです。
この期待は
「半分あたっており、半分はそれほどでもありません。」
ということになります。
何故ならば、「税務」という小さな一つの穴からしか、自分のクライアントの商売を見ていないとすれば、いろいろな業種を担当していることは大したプラス材料にはなりません。
どんな商売に対するときも、過去の数字を税務会計に当てはめていくだけで済むからです。
つまり、商売ごとにどんな特徴があり、どんな可能性や弱点があるのか、などというのは専門性の埒外(らちがい)になります。
一々そんなことを考えていたら仕事の効率が悪くなるからです。
経営者の期待に応えるにはどうしても、自分のポジションを活用して、様々な情報をインプットし、それを役に立つ形でアウトプットしていく、という考え方をする必要があります。
つまり、税理士をひとつのポジションと位置付けることは、その柔軟性において極めて合理的なのです。
つづく