「財務データ」は未来に繋がるデータベース―税理士としての私のスタンス― Ⅷ
ところで、自らの職業を「資格者」や「専門家」ではなく、ひとつのポジションなのだ、と位置付けた場合、提供する専門性や知識といったものはどうなるのでしょうか。
それは「資格」に裏付けられた「知識」であり、「専門性」であるはずです。
私は、それを「媒体」と捉えています。
「手段」といっていいかも知れません。
それは、先述した「専門性」を我々は持っているので、顧客との関係性が特異なものとなり、その使いようによって、顧客の事業経営に役立つはずである、という仮説が成り立つからです。
このように、税理士を「資格」ではなく「立場」と位置付け、税務会計の専門知識を「媒体」と捉えるのです。
そうすれば、税務の仕事は決算書を作成し、申告書を提出した時点で完結するのではなく、更にそこから様々な形で広がっていくことになります。
税務会計の知識や専門性を「媒体」とした場合、その「媒体」を通じてどのような情報の交換が行なわれるのでしょうか。
それは、顧客にとっては自らの業績が明らかになり、我々にとっては顧客の「財務データ」を手にするということにほかなりません。
税理士の役割を限定的に考えれば、税務申告書を作成提出し、そこで確定した税金の納付書をお渡しした時点で、その顧客に対する責任は一区切りがつきます。
赤字とか黒字とかを気にする程度で済む話になります。
しかし、そこで手にした「財務データ」を、未来に繋げるべきデータベースと捉えれば、話は違ってきます。
むしろ、ここから仕事は始まる、といっても過言ではありません。
つづく