資格がもたらすもの―専門性と独自性の間(ハザマ)を考える―Ⅰ

 

我々サービス業の仕事の提供の仕方には大きく2通りのやり方があると思っています。

ひとつは「既定の専門性を提供する方法」ともう一つは「自分にしかできない独自性を提供する方法」です。

 

前者の代表はまさに私が経営する税理士事務所です。

税務と会計という専門的知識が無ければ取扱いに苦慮するややこしい分野を、顧客企業に代わって処理し、申告業務などを代行します。

 

この仕事を提供するには資格が必要であり、所定の試験科目に対しボーダーラインを超える点数を取得しなければなりません。

その試験がかなりの難関なので、有資格者は少数の人間ということになります。

と言っても、現在日本における税理士の数は7万人を超えていますので、それほど希少性が高いとも言えませんが。

 

一方、独自性を提供するというのは、必ずしも資格とは関係ありません

例えば、企業経営に的確なアドバイスを行ない業績アップに繋げていく、と言ったノウハウに、試験科目のような予め決められた規定のようなものがある訳ではなく、やり方はそれを行なう人によっていろいろ様々でしょう。

 

資格で提供する専門性は、その資格要件を満たすルール、規則、法律のようなものに規定されます。

税理士であれば税法を逸脱する訳にはいきません。

ただそこで規定される専門性の運用が複雑でボリュームが多く、素人にはその全容を的確に把握することが難しいので、我々専門家に決算や税務申告など企業活動一部を託すわけです。

 

しかしながら、企業がその数を大きく減らす中、税理士は少しずつとはいえその数を増やしている現在、企業顧問の争奪を巡る競争は激しくなる一方と言えるでしょう。

そうすると一体どのような現象が起こるでしょうか。

 

 

つづく