素朴な疑問―保守と革新、言葉の使い分けについて―Ⅳ(おしまい)
さてそれでは、ここでこの「ズレ」についてどう向き合えばいいのかを考えてみたい。
私にはこの「ズレ」が「ズレ」のままでいいとは到底思えないからである。
田中教授は、先に引用した
―18~29歳と30歳代では「共産党は保守」とみなし、18~29歳では「自民党の方が共産党よりリベラル」と考える有権者が多かった。―
という言葉に続いて、次のように分析しておられる。
―この現象を見て、「今の日本の若者は政治が分かっていない」と決めつけては、世代間の意識のずれがなぜ起きているのかの謎は解けない。―
そうなのだ。
若者が自民党を支持したからといって、彼らが保守化していて政治が分かっていない、などと決めつけることをまずやめなければならない。
そんなことを言えば、左翼的なものの無謬性を盲目的に信じ、時代の風潮に流されていた学生運動盛んなりし頃のかつての若者(私や私の上の世代)の方がよほど分かっていなかったのではないか、という疑念が持ち上がってくる。
決めつけることをやめて、その上で、我々年長者もなにがいい意味でこの国の未来につながるのかを考えなければならない。
我々はかつてのリベラルのイメージに囚われすぎてはいないのか?
田中教授は最後に次のように結んでおられる。
―若い有権者層は、政党やリーダーを旧来の左右の対立軸ではなく、改革か現状維持かの軸で評価している。
今の野党は、旧来の左右の軸にこだわれば、「現状維持」勢力と見なされることを自覚すべきだろう。―
この言葉が何を意味するかお分かりだろうか。
現状維持、は支持されないということである。
それはすなわち、若い人たちが、古い枠組みでは未来がない、と判断しているからにほかならない。
この判断を「悪」と決めつけることはできないだろう。
今の若い人たちは、旧来のイデオロギー的対立になどほとんど興味がないだろうし、私もそれでいいと思っている。
この国の未来にとって何が大事なのか、むしろ我々年長者が真剣に考えるべきなのかも知れない。
おしまい