専門職と広告宣伝について考える―何故知らせる必要性があるのか―  Ⅰ

 

以前、中学校からの同級生で勤務医だった男が私の住んでいる町で開業したことがありました。

彼の場合、40を過ぎてから、知らない町での開業(彼は私の町の出身者ではありませんでした。)だったので、できるだけ町の住人に知ってもらう必要がありました。

 

事前に「何月何日開院します。」といった新聞チラシなど入れたのですが、まだ足りないようだったので「もっと宣伝したら・・」とアドバイスしました。

そうするとその同級生だった医者は

「いや、開業前の新聞チラシは1回までと決まっているんだ。」

というのです。

 

私は少々驚いたので、

「そんなの誰が決めたんだよ?」

と聞くと

「医師会でそう指導されている。」

との返事でした。

「なんで1回しか宣伝しちゃダメなんだよ?」

と更に聞くと

「そういうことを許すと、宣伝ばかり上手な医者が幅を利かすことになって、医者と患者の双方にとって良くないからだ。」

と、当の彼もそれが当たり前かのように答えたのでした。

 

私は、

「へー、医者の世界も意識がまるで遅れてるし、アホな常識がまかり通っているんだ・・」

と、思ったことを思い出します。

そういった規制が今も行なわれているかどうか知りませんが、少なくともそんな前近代的な取り決めから抜け出していなければ世間とのギャップは免れないだろうと思います。

 

とはいえ、あれから10年以上の年月が流れました。

まあテレビなどで派手に宣伝している美容外科などもあるようですので、その辺の閉鎖的な意識からは多少脱却しているのかも知れません。

 

つづく