税理士事務所経営を考える―考えない仕事は停滞という病巣へつながる―Ⅰ
もう20年以上昔の話です。父の事業(税理士事務所)を継ぐために、東京から家族全員で田舎に引き上げてきたころのことです。
久しぶりで慣れない事務所の会計処理の仕事をやりながら、ある日、総務の女性が不思議な仕事をしていることに気が付きました。
男性担当者が仕上げた決算書の数字の横に、赤ペンでなにやら数字を書き込んでいるのです。
「何してるの?」と私が聞くと、当たり前のように
「『赤書き』をしているんですよ。」との返事。
「『赤書き』って何?」さっぱりわからない私は再び聞きました。
「今年の決算書の数字の横に去年の数字を書き込むんです。こうすれば去年と比較できますから。」
「なるほどそうか。で、それは『赤』じゃなくちゃいけないの?」と私。
「わかりませんけど、以前からこうするようにと言われているものですから・・・」
私はすぐにほかの職員にも確かめました。
「ねえ、これって『赤』で書かなくちゃいけないの?」
「さあ、よくわかりません。大先生に言われているので・・・」
そこで、父にも確かめました。
「これ(『赤書き』)って税務署から強制されているの?それともこちらの好意でやっているの?」
すると父は、自分が税務署に勤めている頃はこうやって去年の数字が書かれていると便利だったからそうしている、といったような返事でした。
つまり、強制的な制度してやっている訳ではなさそうだったのです。
つづく