アリエネッティから見たうちのご主人様―物語「妖精アリエネッティ」―Ⅰ
先日まで書いていた、眼鏡が見つからなくてやがて出てきた件、妖精の仕業(しわざ)でもありゃしないかと不思議な感覚だったのですが、本当に妖精がいたら向こうからは私がどう見えていただろうと想像してみました。
妖精はきっとティンカーベルみたいに女の子だろうと思います。
名前は仮にアリエネッティとしておきます。
私はこの家に住む妖精のアリエネッティ。
小人みたいに小さな体だけどちょっとした魔法も使うことができる。
得意な魔法は、魔法使いが箒に乗って空を飛べるように、鉛筆やボールペン、万年筆といったいろんな筆記具にまたがって空中を自由に飛ぶことができるのだ。
と言っても、家の中を飛び回るだけで、外には出ていけないけれど。
私の主な活動場所はこの家のご主人の書斎。
部屋の3方の壁は本に囲まれていて、身を隠すには絶好の場所だから。
この家のご主人は、少しボォーッとした人のいい老人である。
よく筆記具をなくすのは、私が乗ってどこかへ行ってしまうからだ。
先日も愛用のボールペンが無くなった、と一生懸命探していたけれど、いつものように私が借りて、はじっこの部屋まで飛んで行って、うっかりベッドと壁の間に落としてしまった。
いつか見つかったとき「なんでこんなところに!」と、不思議がるだろうな。
うちのご主人に限らず、大抵の落し物が意外なところから見つかるのは私たち妖精のせいなのだが、そのことに人間はちっとも気付いていない。
姿を見せるわけにもいかず、でも人間と共存している私たちの日常は少し退屈だ。
そんな私たちの唯一の楽しみは、人間がモノをなくしたとき、あわてふためいて探す姿を見ることなのだ。
ちょっと意地悪に聞こえるかも知れないけど、姿を見せられない、というハンディのある私たちを大目に見て欲しい。
つづく