机の上のアリエネッティ―突然の出現、狐につままれた?―Ⅲ

いくら探しても眼鏡は見つからない。

仕方がない。

その場は諦めて風呂に入ることにした。

そのうち、

「こんなところにあったよ!どうしてだろう??・・アハハ。」

なんてことになるだろう思って、一旦撤退することにしたのである。

 

そうやって、お風呂に入り、身体を拭いて服を着て、再び書斎に入り、机の上に目をやった。

そうすると、さっきまでそこに存在していなかった件(くだん)の眼鏡があったのである。

 

これには、うれしい!という前に驚いた。

キツネにつままれた、とはこんな感覚を指すのだろう。

 

何かモノが見つかったとき、「そこはさっきも探したけどなあ・・・」という経験は確かにある。

今までも「あのときはどうして気付かなかったんだろう!?」と不思議に思ったことがないわけではない。

 

しかし、これほど鮮やかに(?)なかったものが現れたのは初めてである。

あまりに信じられないので、リビングにいたカミさんに確かめに行った。

「ねえ、さっき僕が捜していた眼鏡を見つけて書斎の机に置いてくれた?

「いや、別に何もしてないわよ。」

・・・そうなのだ。

私がモタモタ捜していた眼鏡を、わざわざ見つけていてくれるほどうちのカミさんは優しくはない。

 

「どうしたの?見つかったの?」

「うん、あったんだけどさ。それが、さっき何回も見たところだったんだ。」

「ふーん、ボーっとしているからよ。」

・・・ま、この程度の反応である。

 

つづく