入れ替わり映画をマーケティング的側面から考察する―他者の立場が驚くほどわからないのが人間―Ⅲ

「入れ替わり」というのは、入れ替わった相手の立場や何を考えているのかがわからないから本人も大いに戸惑うし、その人物を傍から見ている人たちが「こいつ、なんか変!」となるから面白いのである。

 

「ビッグ」にしても、もし人間が、大人になっても子供の頃のマインドをそのままキープできる動物であったならば成立しない映画なのだ。

男は大人になる過程で、いわゆる「少年の心」を忘れてしまうところにこの映画の面白さがある。

 

また人間が、男性の心も女性の心も完璧に理解できる能力をもともと有していたならば「君の名は」も「転校生」も成立していない。

人間というのは他者の立場が驚くほどわからない動物だから「入れ替わりもの」では面白い世界が描けるのである。

 

さて、映画の世界の話はこれくらいにして、現実のビジネス社会の話である。

我々が、常に想像力を働かせなくてはならないのは、自らの商材や専門性を提供する際に、相手がどう受け取るかということである。

 

ここに思いが及ばなくて、こちらの都合だけを押し付けていたならば、ビジネスは成立しない

映画のように笑い話では済まないのである。

 

ところが、売り手市場の世の中では、買い手の都合というものをそれほど推し量る必要がない。

買い手がこちらの言う通りに、こちらの都合に合わせてくれるからである。

 

つづく