サザエさんに見る日本社会の変化―遠い夢物語のようなのどかな世界―Ⅱ(おしまい)
もう一つ驚くのは、昔の日本はお出かけするときお隣に
「出かけますので、留守中よろしくうちの方にも気を配っていて下さいね。」
と頼んでいたということである。
もちろん
「うちの方にも気を配っていて下さい。」
とはっきり言葉に出して言う訳ではなかろうが、暗にそういう意味を含んでいることになる。
そうすると、それを聞いて引き受けた以上、隣のご主人みたいに自分は出かけることができなくなる訳だ。
何と密なる地域社会!こんな「向こう三軒両隣、みんなで仲良く暮らしましょう」的なコミュニティーの上に日本社会は成り立っていたことになる。
今、例えお隣とそれなりに親しくしていたとしても、これはないよなー、と思わざるを得ない。
私は、この感覚がなんとなくわからないでもない世代だが、もっと若い世代にはさっぱり理解できない感覚ではなかろうか。
この漫画では、人の良い隣のご主人は、うっかり留守番役を引き受けてしまったために、自分のお出かけを棒に振ることになるのだ。
そこまでの自己犠牲など、現代では到底考えられないだろう。
しかし、昔の日本では、それが違和感なく4コマ漫画に描かれる世界だったのである。
昔と言っても昭和の話である。
こういった習慣や感覚がいいとも悪いとも私は思わない。
ただ、サザエさんに描かれているこういった世界は、当時の日常だったとはいえ、なんだか遠い夢物語のような気もするのだ。
おしまい