地方における産業構造を根本から考え直してみるⅥ
この立木を購入する際の原価は、山によって大きく変わることはないらしい。
ということは、質のいい木の多い山を目利きでうまく買えれば儲かる、という極めてシンプルな仕組みなのである。
もうお分かりだと思うのだが、林業も切り出しさえすれば、あとは売る努力をする必要がない。
市場に出荷したものはすべて捌けるので在庫を抱えるリスクもないのである。
また、農業も畜産業も良い品質のものを作る、という課題は常に課せられているが、林業の場合切り出しから先の作業であればそれもない。
購入の際の目利きが問われるだけである。
ただし、ここまで述べてきた林業というのは、立木を買い付け切り出して市場で販売するまでの仕事のことを指している。
木を植え付け育てる、という意味での林業のことを言っているわけではない。
もちろん「林業」といえば、植林し木を育てることを含めて広く林業と呼ぶことになる。
いわゆる「山」を育てるという意味である。
育てる林業になれば、まめに手入れをするなど林業独特のノウハウが必要となってくるだろう。
ただ、いずれにしても「売る苦労」という奴は存在しないのである。
つづく