良い子と悪い子Ⅲ
こういったことを2,3回繰り返すと、大抵の場合、後継者は「良い子」になってしまう。
実績のない後継者にとって、それでも先代に逆らいきる、というのは極めて困難なのである。
結果として、自分の主張を通すことをあきらめた「良い子」は先代のビジネスモデルを踏襲する。
ところがそのモデルは、とっくの昔に陳腐化してしまった考え方や手法に基づいているために、現代に通用するはずもない。
もともと厳しい経営環境の中で、通用しないビジネスモデルでやらされるのだからうまくいく訳がないのである。
本人も仕事をやっていて面白くもなんともないし、当然結果は出ない。
そうすると本業よりも、だんだん仲間とのサークル活動的な方向へと走り始めるのだ。
こっちへ投入するエネルギーは、どう理屈をつけようとも本筋でないことだけは確かなのである。
先代も、自分の指導による経営がそれほどうまくいっていないという引け目もあるのか、この点については後継者に対してそれほどやかましく言わない。
結果、親子で取り掛かっているにもかかわらず、本業は不振から抜け出せない。
悪循環である。
そんな事例をいやというほど私は見てきた。
現代は「良い子」が受難の時代なのである。
つづく