良い子と悪い子Ⅱ

そして、私にとって意外だったのは、圧倒的に前者「良い子」の方が多かった、ということだ。

小さな軋轢やトラブルがない訳ではないが、みんなおおむね親父の言うとおりにおとなしく仕事をやっている。

 

私は父と何年間も事務所経営を巡って、なんだかんだとぶつかりあった。

そんな私からは、これは信じられない現象でもあったのだ。

 

もちろん、なんにしろトラブルは起こらないに越したことはない。

しかし、若い経営者が何か新しいことにチャレンジしようとすれば、十中八九先代とぶつかることになる。

 

理由は簡単である。

ほとんどの場合、先代は後継者がやろうとする新しいことがにわかには理解できないのだ。

なので

「とりあえずやってみろ。」

とは決して言わない。

 

理解していないにもかかわらず、

「まだまだお前は甘い。」

「商売のことが何もわかっていない。」

「お前に責任が取れるのか。」・・・等々、

あらゆるセリフを浴びせながら、やや筋違いとも思えるような理屈で否定にかかる。

よく分かっていないにもかかわらずである。

 

残念ながら

「責任は全部俺が取ってやるからとりあえずやってみろ。」

といったセリフを私は聞いたことがない。

 

 

つづく