伝統の破壊と再生―日本酒の挑戦―Ⅳ
経営革新を推し進めるには、自社内部の改革だけでなく、外部環境にも目を配る必要がある。
外部環境が極端に変化した場合、企業内部の改革だけでは対応しきれないからである。
― 桜井氏は
「日本酒が売れなくなったのは、日本酒に求める機能が変わっていたにもかかわらず、酒蔵がそれに対応してこなかったからです。」
と言う。
これは一つには、酔いつぶれるまで酒を飲むといった飲酒の習慣が廃れたということがある。
「以前と同じように量を飲んでもらうことを前提とした経営では生き残れません。ほろ酔いでも楽しめる酒を造ろう。そう思って挑戦したのが「獺祭」です。」 ―
我々が学生時代(昭和27年生まれ)アルコールを口にするときは、へべれけになるまでのみ続ける、というのが通り相場だった。
同僚と飲むときも先輩におごってもらう時も、品よく嗜むといった飲み方はまずありえなかったのである。
しかし、そういった飲酒事情はだいぶ変わったらしい。
暴飲といった行為を今の若い人たちは好まないようである。
ある意味健全なことなので、悪い話ではないが、酒を提供する側からは「量が捌けない」という問題が出てくる。
ここにおいても「質への転換」という課題の解決が求められるのである。
つづく