「奪還」・・スバルの矜持Ⅲ
以前から言われていたことだが、スバルのレーシングチームに割り当てられた予算は他の強豪チームに比べて一けた少ない。
レース車両を1台しか持たない(持てない?)装備も人員も他チームからすると見劣りするのである。
このレースのピットクルーは、全国のスバルショップから集められた若い現場技術者たちであった。
他のチームのようにレース専用のプロパーなメンバーではないのだ。
しかし、その腕を見込まれて全国から選抜された精鋭たちである。
彼らはレースが終わればまた、工場の一社員として全国のスバルショップへと帰っていく。
そんな低予算のチームとはいえ、総監督の辰巳英治のもとその士気は高かった。
ここ数年、散々なトラブルに見舞われながらも虎視眈々とレースでの勝利を狙っていたのである。
さて、そのニュルブルクリンク24時間耐久レースにおいて、ポールポジションからスタートしたインプレッサは、並みいる強豪相手に一度もトップの座を譲ることなくフィニッシュした。
スバルの圧勝だったのである。
レース終了後、それぞれの担当責任者は互いの健闘をたたえ合い涙していた。
苦しい戦いに勝利したのだ。
つづく