「なんの、なんのっ！」・・・熱く取り組んでいたあの頃

昔、中学生の頃、部活で柔道をやっていた。残念ながら段位までは取れなかったが、かなり打ち込んでやっていた時期もあった。

そうすると、時折、対外試合もある。選手として出場することもあれば、応援席から先輩の取り組みに声援を送ることもあった。

先輩が出場した対外試合を応援していた時のことである。試合は白熱して、技をかけたりかけられたりと攻防が続いていた。

先輩が、相手の技の連続でやや劣勢に立った時のことである。私は一生懸命応援していたのだが、このとき思わず「なんの、なんのっ！」と声を上げていたのである。

なんの、なんの・・・・どういう意味かというと、「なんのことはないぜ。へっちゃらだ。」とか「なんのこれしき、平気平気！」といった気持ちを込めての声援だった。

相手が攻勢に出る。すると、私が「なんの、なんのっ！」と声をかける。こっちが攻勢をかけたときは「いけぇーっ、チェストいけっ！」と声援するのである。

「チェストいけっ！」というのは鹿児島弁で「そりゃあぁ、いったれいっ！」というくらいの意味だろうか。

とにかく「なんの、なんのっ！」は、私がとっさに思いついた言葉であった。別に以前からあった掛け声でもなければ、試合の際にほかから聞こえた声援でもなかったのだ。

あんまり強くなかった私たちの柔道部は、そんな声援も空しく負けることが多かったが、多少攻勢に出られても「なんの、なんのっ！」と跳ね返す心意気だけは持ちたかったのだ。

この「なんの、なんのっ！」は結構受けたのか、いつの間にか周りで応援している他の連中も使い始めた。攻められるたびに「なんの、なんのっ！まだ、まだっ！」と、押し返すことを願って懸命に応援する。ああ、青春の一幕だったな、と思い出す。

「なんの、なんのっ！」・・・中一か中二くらいだったはずなのに、こんな言葉を思いつくなんて、かなりませたガキだったのかも知れない。と、同時にとっさにこんな言葉が出てくるというのは、我ながら、ちょっとひねったようなとはいえ、なんか面白い言葉のセンスを感じる。

現在、こうやってブログを書いているわけだが、今でも、書きながらいろいろと言葉を駆使する際に、時折「あ、なかなか面白い表現を思いついた。俺って言葉のセンスあるのかも。」と、軽く自画自賛することがある。

遠い昔、思わず口をついて出た「なんの、なんのっ！」。何かに強く打ち込むとき、こうやってたくまずして自然に湧いて出る言葉というのは、軽く人生を彩る意味で捨てがたい魅力があるのだ。

 

PS　「いやいや『なんの、なんの・・』は、全国的に試合の際、普通に使われているよ。」という方がいらしたら教えてください。

私のとんだ思い違いということになりますから。

 

柔道をやってたんですよっ、実は。