学習したスキルは活かせるのか?!?―恋愛とマーケティングの不可逆性について―後編
さて、恋愛とマーケティング、今回の本題はこれからである。
私はここまで語って、さらに彼らにとってはちょっとがっかりするかも知れない、或る意味深な現実について付け加えた。
― ところで、君たちに恋愛経験があるとしたら、それを思い出してもらいたい。
そうすることで、今日の講義のメインテーマであるマーケティングについて、ある程度理解が進んだのではないかと思う。
つまり恋愛という一つの行為がマーケティングを理解するうえで役に立ったということだ。
したがって、これをさらに応用することができれば、将来、ビジネスシーンにおいてマーケティング的アプローチが必要になったとき、君の恋愛経験はそれが成就したにしろダメだったにしろ役に立つことになる。
さて、ということは、次のような仮説も成り立つんじゃないか、と考えられる。
それは、先にマーケティング的アプローチについて学んでいれば、現実恋愛の場面でもこれが活かせるはず、という、逆の公式も成り立つのでは?ということになるよね。
つまり、マーケティングの手法をものにしていれば、恋愛もうまくこなせるんじゃないか、という期待が持てるわけだ。
と、ここで残念なお知らせをしなければならない。
それは、マーケティングにおいて、恋愛経験を活かすことができたから逆も成り立つ、という公式は成立しないということなのである。
つまり、マーケティングを勉強してそれに長けた人間が、恋愛においてもそれを応用してうまくいくかといえば、「それはない!」という、実に残酷かつ残念な結論に達するのである。
恋愛経験→マーケティングに応用、という公式は成立するけれど、マーケティング的知識→恋愛に応用、とはならない。
つまり、マーケティングと恋愛の関係は一方通行であって不可逆的である、という現実を受け入れなければならないのだ。
さて、それは何故なのか?何故、逆は成立しないのか?
それは、マーケティングが極めてビジネスライクかつ論理的な世界なのに対して、恋愛にははるかに複雑な感情的要素が入ってくるからにほかならない。
つまり、ターゲットに関する様々な情報を整理してデータとしてまとめ、攻略に活かそうとしても、いざ具体的なアプローチの場面となったら、その場でのちょっとした仕草であったり、語り口の微妙な癖であったりというのが向こうの感情にどう反応するかが、論理では読めないし、説明できないからである。
だから、マーケティングを極めたところで恋愛に成功するとは限らない、という、冒頭ちょっと期待を持たせたわりには、なんともがっかりの結論に達することをお許し願いたい。
まあ、男子学生諸君、恋愛を成就させるにはマーケティングとはまた違った修業を積まなければならない、ということでこれからも頑張ってください。―
と、何とも希望の持てない結論の講義になったのであった。
と、この講義をしたのはもう20年以上昔の話である。
あのときは、恋愛とマーケティングの関係について、上記のような話をしたのだが、今では、こんな分析自体成り立つのだろうか、とも思う。
なんといっても、まだ、スマートフォンどころか携帯電話もそんなに普及していない時代だったからだ。
仮に、恋愛とマーケティングに関係性を持たせるにしても、現在は私が講義した頃とはずいぶん異なる切り口になるのではないだろうか。
今の男の子たちを見ていると、そもそも「恋愛」に対してどれくらい前のめりなんだろう?と懐疑的にならざるを得ない。
私が若かった頃みたいに、ガツガツしていたら今の女の子には相手にもされないのだろうか?
しかし、である。
そもそも、マーケティングも恋愛も、心をワクワクさせる実に面白いものなのだ。
「草食系」とか言われて、大人しくしているだけなんてなんだかなあ・・と思ってしまうのだが。
草食系じゃダメだぜ!
おしまい