覚えてもいないとは・・・―「ねえ、お兄さん・・」このひとことから始まった或るエピソードーⅢ

後日談の後日談・・まずは一回目の後日談から

いつも利用している靴磨き店の従業員である若者のあまりの無愛想さに一言声をかけた話と、そのことについての感想を書いた私は、この話はもうこれでおしまいと思っていたのですが、実はそれで終わりではなく、さらに後日談みたいなことがあったのです。ただ、そんなに大した話でもないのに何回もしつこい、と思われるのもどうかなあ、と考えて特に書こうとは思っていませんでした。

しかし、つい先日、その後日談のさらに後日談的な出来事が突然私の身に起こったのです。そのお話を、後日談と含めてご報告してみたい、と思います。

 

接客態度が変わったかだろうか?

私は、最初に声をかけて以来、あの靴磨き店の若者は、少しは考えてくれて態度とか変わっただろうか、というのは少し気にはなっていました。とはいえ、鹿児島と羽田の行き来の際にしか立ち寄れないために、なかなか靴を磨く機会は訪れなかったのです。

さて、後日談というのは、そうやって、少し時間が空いたあとのことです。とうとうその日はやってきました。また、あの靴磨き店に立ち寄る機会が訪れたのです。

もちろん、主たる目的は靴を磨いてもらうことで、あの男性に会えるかどうかは、どうでもいいといえばどうでもいいことです。しかし、やはり彼がまだあの店にいるとすれば、私の言葉を受けて、接客態度が変わったかどうかは気になるところではあります。

私は、いつもより少し緊張しながらくだんの靴磨き店へと向かいました。

 

さて、初めの後日談、何があったのか

靴磨き店に近づくと、あの若者はまだ店にいました。しかも、今回も数人いるスタッフの中で偶然にも私の靴を磨くのは彼の担当となったのです。今回は履いたまま磨いてもらうのではなく、靴を脱ぎ、彼に渡してカウンターで磨く姿を見ていました。

前回もそうだったのですが、今回も心なしか他のスッタフのときよりも短い時間で済ませたように見えました。まあそれは仕方ないとして、私は磨き終わった靴を受け取りました。

渡すときや受け取るときに何回か目はあったはずなのですが、特に彼の方からは何の言葉もありません。『覚えていないのかな?』と思い、私の方から声をかけてみました。

「ねえお兄さん、俺のこと覚えている?」

彼は改めて私の方を見て

「え?いや、わかりません。」

と答えました。

『そうか、こいつ、覚えてもいなかったのか』と心の中で思いつつ

「この前、『もっとちゃんと接客したら』と声をかけたじゃないか。覚えていない?」

そこまで言えばさすがに思い出すかと思ったのですが、彼は

「はあ、いえ。あの、毎日いろんなお客さんが多いもんであんまり・・・」

これは私にとって軽い衝撃でした。

なんと今回の件、あの男の記憶にはなかったのです。

私は心の中で

『へぇー、ああやって、自分の仕事の態度に関して客に言われたことさえこいつは覚えていないんだ。』

といささか呆れつつ、まあこの人間とこれ以上話しても無駄だと思い、「ああそう。」とだけ答えて、料金を払いその場を離れました。

 

この後日談、その後どう考えたのか

そうなのです。あの男は私との一件を覚えてすらいませんでした。私が最初に彼に靴を磨いてもらったとき、彼は自分の仕事に対する姿勢について声をかけられたことになります。

特にあからさまなミスがあったわけではないのに、あんな風に客の側から注意されることなど、おそらく初めてだったのではないかと推察されます。そんなことはそうそうあることではないでしょう。

それでも彼はそのことを覚えてもいませんでした。あの一件に関していろいろ考えたり、まあある意味ちょっとは悩んだりした私の完全な独り相撲だったことになります。

そんなことを考えながら振り返ってみると、確かに今回もあの男の接客態度は最初と全く変わっておらず、相変わらず相当無愛想なものでした。

『多少なりとも変わってくれればいいけど。』などと思っていた私の思いは、全く伝わらなかったことになります。実はこのことは、後日談としてすぐに書こうと思っていたのですが、どうせその内容は「ダメな奴はやはりダメでした」的なネガティブな話になるので、もうやめておこうと思いあえて書かないでいたのです。

 

実は衝撃的な出来事が・・

にもかかわらず、今そのときの思いをあえて復活させて、また書くはめになったのは何故か!それは、このあと実に衝撃的な出来事が私に起こったからにほかなりません。それはこの件を、またぶり返してでも書かずにはいられないくらいのインパクトを私にもたらしたのでした。

さて、前振りはこれくらいにして、その後日談の後日談、今回いったい何があったのか書こうと思います。

これはかなり昔、磨いてもらったときのもの。