税理士らしくないですが・・―私が新入社員だったあの頃―Ⅳ(おしまい)
新入社員のとき、いきなりソロバンをはじかされた私は、そのやり方を全く知らなかったせいで散々笑われてしまった。
そんな悔しさをバネに一念発起、ソロバンの達人になるくらい努力をしたのかといえば、全くそんなことにはならなかったのであった。
もともと苦手意識も強かったので、上達する気もさらさらなかったということもある。
結局、10級以上の練習帳を買うこともなかった。
そのうち、電卓が一般化してきて(まだPC(パソコン)の時代ではありませんでした。)なんとか、ソロバンの呪縛からは逃れることはできたが、初めは軽いトラウマになるくらい苦痛であった。
当時の「新人研修」と言ってもそんな程度だったのである。
現在、新卒で入社した新入社員のうち、1年以内にその何割かは辞めるといわれている。
3年以内だともっと多いらしい。
おそらく、勤めたのはいいが、自分の思うところと随分違う、といった理由が多いのだろう、と思う。
私の場合、コツコツ数字に向き合うなど、もともと向いているとも思っていなかったが、それに輪をかけて、ややこしい勘定科目とかソロバンでの細かい計算とかに向き合うことになり、悪戦苦闘せざるを得なかったのである。(まあ、税理士としては、かなりの問題発言ではありますが・・・)
と、そんなこんなでつくづく「この仕事、向いていないかもなあ・・・」と思いながら、しばらく件の事務所で過ごしたのだが、やはりどうも税務会計の仕事の本質が何たるかが掴めない。
このままでは仕事も覚えないし、資格試験を目指すのも難しそうである、と自覚したのである。
というわけで、その事務所はきっちり2年勤めたあと退職し、アルバイトをしながら大学院を目指すことにした。
今でいうフリーターの道を選んだのである。
今思い出してみれば、我ながら自分のことを
『全くもって仕事のできる新入社員ではなかったなあ・・・』
と断定できる。
まあ、人付き合いはいい方だったので、周りの先輩たちとは仲良くさせてもらったが、仕事の面ではいろいろと迷惑をかけてしまったのではないか、と振り返るのだ。
そんな私だが、ちょっとだけ言い訳させてもらえれば、その後、大学院時代に友人と立ち上げた会社では、結構頑張ってその事業を短期間にかなりの年商までもっていった。
だからまるで仕事ができない、というわけでもない。
向き不向きが極めてはっきりしているのだ。
そういう意味では、「会計事務所の職員」というポジションは、まるで向いていなかったことになる。
さて、わが事務所の新入社員はどう感じているだろうか。
私みたいに極端に向き不向きで混乱することはないだろう。
なんとか頑張って彼なりのポジションを掴んで欲しいと思う。
いろんなことを覚えなきゃあ・・・
おしまい